2021 Fiscal Year Annual Research Report
Innovative study of the spintronics using the angular momentum of nuclear spins
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21H01800
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中堂 博之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (30455282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊田 高之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, リーダー (00343939)
今井 正樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (10796329)
矢野 雅大 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (30783790)
松尾 衛 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 客員研究員 (80581090)
立石 健一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (80709220)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バーネット効果 / ベリー位相 / 回転ドップラー効果 / NQR |
Outline of Annual Research Achievements |
核四重極共鳴(NQR)法を用いた回転運動と核スピンの相互作用について研究した。信号検出器であるコイルそのものを回転させる手法であるコイル回転法を用いて、1)試料とコイルを同時に回転させる、2)コイルだけを回転させる、3)試料だけを回転させる、3つのパターンの測定を行った。1)は試料と同じ回転座標系上で核スピンの観測を行うので、試料にはたらく慣性力であるバーネット磁場を測定でき、2)は試料は止まっているので何も起きていないが、検出器が回転することによる回転ドップラー効果を検出できる。3)については二つの解釈が可能であり、回転座標系に乗った場合に生じるバーネット磁場とドップラー効果を組み合わせた解釈と、実験室系から見てNQRの量子化軸が周期的に回転することによって生じるベリー位相による解釈である。また、この3つのパターンに対してそれぞれ回転軸に対してコイルを平行な場合と、垂直な場合の合計6パターンの実験を行った。コイルの向きは検出できる核スピンダイナミクスの成分を決めており、回転軸と平行(垂直)なコイルは回転軸と平行(垂直)なスピンダイナミクスを測定できる。本年度はこれら回転NQR実験で得られたスペクトラムを定式化することに成功し、バーネット効果と回転ドップラー効果が異なることと、バーネット磁場とベリー位相の同等性を明確に示した。これにより、 回転系における核スピンダイナミクスの詳細を明らかにし、Physical Review Bに論文が掲載された。また、この成果を国際会議で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的の一つであった研究実績の概要で述べた、6つの回転NQRスペクトラムの定式化に成功し、論文として出版できたことは大きな進捗である。本年度の本研究課題予算で購入した、有機蒸着源を別予算で購入した真チャンバーに設置した。これにより、マグネトロンスパッタと有機蒸着による成膜を試料の大気開放なしに行えるようになり、本研究課題の当初目的の一つである核スピンからのスピン流生成を実証する実験が実施できるよう実験環境を整備できた。核アインシュタイン・ドハース効果の研究においてはこれまでのところ、環境振動、実験室の対流や、環境磁場を取り除くことが重要である事が分かっており、昨年度はスタック構造とマスダンパーによる除振と、装置全体を密閉空間に閉じ込める事による対流対策を試みた。既に除振性能10の-3乗°を達成しており、あと一桁の性能向上で積算による信号検出が、あと二桁の性能向上で一回の測定で信号検出が可能となる見積もりである。除振目標が達成され次第、環境磁場対策に取り組み、アインシュタイン・ドハース効果の再現を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に出版したPhysical Review Bの論文の内容をさらに発展させ、NMRにおいてコイル回転法を応用し、磁場と回転方向の角度依存性を測定したところ、バーネット効果とベリー位相が競合した新規な量子状態が見つかったので、これを論文として出版することを目指す。実験においては、別プロジェクトで進めていた磁性流体のバーネット効果において、試料の回転数よりも粒子の回転数の方が倍以上大きくなっていることが明らかとなったので、これをNMRにおいて実証する。また、次年度の予算でレーザーを購入し、核スピンからのスピン流生成の実証実験に取り組む。これと並行して、核アインシュタイン・ドハース効果の実証に向けてさらなる除振性能向上を試みる。現状では、これまでに我々が用いていた振動検出方法である光りテコのスポットをカメラで画像解析した方法では、振動を検知できないところまで来ており、暗室を用意し、光りのスポットをPSDで検出する方法に切り替える。
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Research Products
(5 results)