2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the chemistry of gaseous molecule at iron binuclear center using nuclear resonance spectroscopies
Project/Area Number |
21H02064
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
當舎 武彦 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 専任研究員 (00548993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀谷 正樹 佐賀大学, 農学部, 助教 (80532134)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 反応中間体 / 金属酵素 / ヘム / 一酸化窒素 / 電子スピン共鳴 / 核共鳴非弾性散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜結合型一酸化窒素還元酵素(NOR)のヘム鉄と非ヘム鉄からなる活性部位で起こる化学を理解するために、分光計測による反応中間体の化学種の決定を目的としている。これまでの光照射によりNOを放出するケージドNOを利用した時間分解分光計測から、以下のことが明らかにされている。還元型のNORは、まず1分子のNOを反応し、第一反応中間体を形成し、第二中間体を形成する。そして、第二中間体がもう一分子のNOおよびプロトンを反応することで亜酸化窒素を生成する。本課題では、これらのNORの反応中間体の化学構造を決定することに挑んでいる。 予備的な実験から、還元型NORとケージドNOを混合した試料を凍結し、液体窒素温度下で紫外光を照射すると、ケージドNOからのNOは発生するものの、NOが溶液中を拡散しないため、NORの反応は進行しないことがわかっている。また、この試料の温度を徐々にあげることで、反応が進行することも突き止めている。そこで、本課題では、この実験条件をより細かく検討し、反応中間体の捕捉条件を検討した。その結果、低温下でのケージドNOの光解離後、試料温度を160-170 Kに昇温することで、ほぼ量論的に第一反応中間体を捕捉できることがわかった。更に昇温を続け、190-200 Kに試料温度をあげると、第一中間体が消失したため、この条件で第二中間体が形成していると考えられた。 反応中間体の化学構造の詳細な検討は、放射光分光である核共鳴非弾性散乱(NRVS)により行う予定である。NRVSでは、試料の鉄原子を同位体である57Feに置換する必要があり、同位体置換したNORの調製を行った。また、NRVS測定により中間体の測定を行うために、クライオスタットに導入可能なNRVS測定セル用の専用ホルダーを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
還元型のNORにケージドNOを加え、凍結した試料を準備し、低温下での光照射によりNOを発生させ、徐々に温度を上げる手法で、反応中間体の捕捉条件の検討を行った。反応中間体の生成については、電子スピン共鳴(ESR)分光を用いた。低温下でのケージドNOの光解離に関しては、1時間光照射を行えば十分であることがわかった。第一反応中間体の形成は、160-170 Kへの昇温で、その蓄積が最大になることが示された。そして、190 Kまで昇温すると第一中間体に由来するシグナルが減衰することがわかった。しかし、ESR分光では、第二中間体に由来すると考えられるシグナルを観測することはできなかった。そこで、更に昇温を続けると260 K付近でヘムの酸化がみられ、NO還元反応が完了したことが示された。第二中間体がより蓄積すると考えられているプロトン輸送を抑制したNOR変異体を用いた場合も、結果は野生型と同様であり、第二中間体のシグナルを観測することができなかった。これらの結果は、第二中間体はESR分光においてシグナルを示さない化学種の可能性を示唆している。 NRVSによる反応中間体の構造情報を得るために、鉄を57Feに置換したNORを調製した。試料の調製については、培地調製時に用いる酸化鉄の代わりに57Feを塩酸に溶かしたものを利用して行った。NRVS測定において、低温での光照射および昇温を効率良く行うために、NRVSセルの調温が可能なホルダーを設計した。設計したホルダーをクライオスタットに導入し、動作確認を行い、設計したものが使用可能であることを確認した。 以上のように、昨年度の研究では、NORの反応中間体の捕捉条件を概ね決定することができたうえ、今後のNRVS測定の準備も進めることができており、順調に研究が進められているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ESR分光測定の結果に基づいて決定した反応中間体の生成条件を参考にし、NRVSセル中で還元型NORとケージドNOの反応を行い、NRVSスペクトルを測定する。はじめにESR測定においてシグナルが観測できている第一中間体の測定を行う。測定時は、ケージドNOの同位体を用いることで、活性部位に結合したNOに関する伸縮振動の値を得る。次に、ESRで、第一中間体のシグナルが消失した条件でのNRVS測定を行い、第一中間体が反応した後の状態における構造情報を得る。NRVSは、鉄の状態によらず鉄とNO間の伸縮振動が観測可能であるという特性がるので、他の分光法では観測されなかった化学種も観測可能である。 初年度に引き続きESR分光法を利用した反応条件の検討も行う。これまでの研究から第二中間体が反応する際には、もう一分子のNOとプロトンが必要であることがわかっている。そこで、ケージドNOの量を少なくしNORに対して一当量以下にすれば、第二中間体の蓄積が容易になると考えられる。また、pHをアルカリ側にすることもプロトンの供与を抑制する効果があると期待できる。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Short-lived intermediate in N2O generation by P450 NO reductase captured by time-resolved IR spectroscopy and XFEL crystallography2021
Author(s)
Nomura T., Kimura T., Kanematsu Y., Yamada D., Yamashita K., Hirata K., Ueno G., Murakami H., Hisano T., Yamagiwa R., Takeda H., Gopalasingam C., Kousaka R., Yanagisawa S., Shoji O., Kumasaka T., Yamamoto M., Takano Y., Sugimoto H., Tosha T., Kubo M., Shiro Y.
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Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences
Volume: 118
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] XFEL Crystal Structures of Peroxidase Compound II2021
Author(s)
Kwon H., Basran J., Pathak C., Hussain M., Freeman S. L., Fielding A. J., Bailey A. J., Stefanou N., Sparkes H. A., Tosha T., Yamashita K., Hirata K., Murakami H., Ueno G., Ago H., Tono K., Yamamoto M., Sawai H., Shiro Y., Sugimoto H., Raven E. L., Moody P. C. E.
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Journal Title
Angewandte Chemie International Edition
Volume: 60
Pages: 14578~14585
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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