2021 Fiscal Year Annual Research Report
Application of Rb-K substituted biotite to distinguish K supplying power from Cs retention ability on soil-to-plant transfer of radiocesium
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21H02090
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
中尾 淳 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (80624064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢内 純太 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (00273491)
奥村 雅彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主幹 (20386600)
小暮 敏博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50282728)
和穎 朗太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (80456748)
山口 瑛子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究職 (80850990)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 吸着選択性 / フレイドエッジサイト / 元素置換 / 放射性セシウム / 密度汎関数法 / EXAFS解析 / X線回折分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
具体的内容 黒雲母は放射性セシウム(RCs)吸着とカリウム(K)供給という2つの機能により土壌から植物へのRCs移行を抑制するが、これらの機能を分けて調べることはこれまで困難であった。そこで、この2つの機能がRCs移行抑制に及ぼす影響を切り分けて評価するために、黒雲母のシート層間に元々存在しているKをルビジウム(Rb)と置換させた、RCs吸着能は大きいがK放出能がほとんど無い“K欠損型”の黒雲母の調製を試みた。様々な試行試験の結果、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(Na)溶液を用いて雲母層間のKをNaと置き換えた後で、Rbを導入する方法が最も置換率が高いことが分かった。ただし、Rb置換後の雲母層間はほぼ完全に収縮(もしくは脱水和)した状態となっていて、層間でのCs吸着能が小さかった。そこで、層間のRbを一部カルシウム(Ca)の水和イオンと置換することで層の膨潤を促した結果、高いCs吸着能をもつ“K欠損型”黒雲母(Ca-Rb型)を調製することが出来た。このCa-Rb型黒雲母の層間が一部膨潤していることはX線回折分析により明らかにし、この黒雲母層間でRbが内圏錯体を形成していることは放射光を用いたEXAFS解析により明らかにした。 なお、ほぼ同じ膨潤状態であるにもかかわらず、Ca-Rb型の黒雲母はCa-K型の黒雲母と比べてRCs吸着能が小さい結果となったため、密度汎関数法を用いた第一原理計算シミュレーションを行った結果、Rb型の雲母層間に置かれたCsはK型の雲母層間に置かれたものよりも安定性が低いことを明らかにすることが出来た。
意義・重要性 黒雲母のRCs吸着能とK放出能を切り分けることはこれまで不可能であった。これを明らかにすることで、土壌中でのRCs動態の規定要因を正しく理解できるだけでなく、汚染リスクの低減化に向けた応用(適切な散布資材の提案など)が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
黒雲母層間のKをRbに置換すること自体は既往の技術を用いて容易に達成できたものの、Rb置換後に完全に収縮した層を膨潤させることや、Ca-Rb型の黒雲母とCa-K型の黒雲母のRCs吸着能を等しく揃えるための実験条件の検討に多く時間を費やした。結局、両タイプの黒雲母のRCs吸着能を完全に同一にすることは難しいと判断し、代替案として、Ca-K型に関しては4つの膨潤度のものを作製し、K放出能とRCs吸着能それぞれが大きく変動する5つの試料群を用意する戦略に切り替えた。 Rb型とK型での層間構造の違いや、層間でのRCsの安定性の違いについて計算科学シミュレーションでの検証を進めている。まずは黒雲母よりも構造が単純な白雲母モデルについて、真空状態を仮定して層間を拡げた時のエネルギー変化から、層間でのCsの安定性を評価する方法論を確立した。今後はこの方法論を用いて複数の条件での検討を進めていく予定であり、進捗は順調といえる。 植物栽培試験に関しては、培養土としていくつかの候補土壌の物理・化学性を分析し、RCs吸着能もK放出能もほとんど持たない黒ボク土を選定することが出来た。栽培に用いるポットのサイズや培養条件については検討中であるものの、Rhizotestという仏国産の装置が本研究の目的に適していることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
5種類の元素置換型雲母の調製は完了したため、今後はこれらのRCs吸着能およびK放出能に関するパラメータの採取を行う。さらにこれらの雲母を培養土に異なる割合で混入後に安定Csを添加し、エイジング処理(約100日)を施すことで汚染土壌を模擬した培養土の調製を進める。培養試験に用いる予定のRhizotest装置の使用方法に関しては、本装置の使用経験のある関係研究者の助言を頂くとともに、装置の購入を進め、2022年度内に栽培条件の決定まで進めていきたい。 計算科学シミュレーションに関しては、白雲母モデルを用いた分析プロトコルが確立できたため、まず3パターンの層間拡張方式を用いて層間Csの安定性の変化について調べる予定である。
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Research Products
(6 results)