2022 Fiscal Year Annual Research Report
サツマイモ直播栽培の実用化を阻む親いも肥大の機構解明
Project/Area Number |
21H02177
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
境垣内 岳雄 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 上級研究員 (00414847)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末松 恵祐 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 研究員 (30807996)
鎌田 えりか 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 研究員 (40738118)
青木 直大 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70466811)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | サツマイモ / 直播 / 親いも肥大 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は親いも肥大に関与する遺伝領域の解明を主な取り組みとした。具体的には、親いも肥大性の異なる「九州199号」と「コガネセンガン」とのF1系統群(200系統)を3月に直播し、8月に親いも重、子いも重などを測定した。これと並行して、F1系統186個体からDNAを抽出し、GRAS-Diを用いてジェノタイピングを行った。得られた25,358多型を用いて、polyploid GWASを実施したところ、親いも重および親いも重率(親いも重/親いも重+子いも重)に共通したピークがITR_r2.2のchr11に認められた。予備的な調査として、このピークに関わるSNPを検出する優性マーカーを作成し、親いも重率が明確に異なるF1系統22個体の遺伝子型を調査したところ、形質と遺伝子型が一致した割合は約80%であった。 親いも肥大性の異なる2系統(「コガネセンガン」、「九州199号」)について、生育時期別(5月、6月、7月)に親いもの酵素活性や代謝物の解析を行った。この結果、「コガネセンガン」では、デンプン合成に関わるADPグルコースピロホスホリラーゼ(AGP)活性や転流糖の分解に関わるスクロースシンターゼ(SUS)活性が高く、反対に「九州199号」では、親いものAGPやSUSの活性が低い傾向が認められた。一方で、2022年度と異なる傾向がみられた部分もあった。 親いも肥大性の異なる系統の発現変動遺伝子群の比較について着手した。具体的には、「九州199号」と「コガネセンガン」の親いもからRNAを経時的にサンプリングした。現在、でんぷん等貯蔵物質の代謝に関わる遺伝子に着目したRNA-seqによる遺伝子発現解析を進めている。 「九州199号」はサツマイモとしては特異な立型の草姿である。2022年度に引き続き、草姿の異なる親系統に由来するF1系統群を対象として、立型の出現頻度について評価した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の最終的な達成目標の一つは、サツマイモの親いも肥大に関与する遺伝領域の解明である。2022年度に、親いも肥大性の異なる「九州199号」と「コガネセンガン」とのF1系統群を対象としてpolyploid GWASを実施したところ、親いも重および親いも重率に共通したピークがITR_r2.2のchr11に認められた。これはサツマイモの親いも肥大に関する遺伝領域を示唆する世界で初めての結果であり、新規性が極めて高い。また、親いも肥大に関する遺伝領域の存在を示唆できたことから、平行して実施している親いも肥大に関連する遺伝子発現解析、および、酵素活性や代謝物の解析の結果と相互に関連させることで、最終年の2023年度までに親いも肥大のメカニズムの考察に迫ることができると考えている。以上のことから、本課題の現在までの進捗はおおむね順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度にITR_r2.2のchr11に検出したピークの再現性を検証するため、「九州199号」と「コガネセンガン」とのF1系統群を3月に直播し、8月に親いも重、子いも重などを測定する。加えて、親いも肥大性をより高精度に予測できるDNAマーカーを開発するために、九州199号とコガネセンガンの全ゲノムリシーケンスを実施する。得られたDNA多型と形質データを比較し原因遺伝子領域の絞り込みを行うとともに、22年度に得たRNA-seqの発現データとあわせて原因遺伝子の推定を行う。 2022年度と同様な栽培試験および親いものサンプリングを実施する。得られる酵素活性や代謝物の動態データを、年時間変動を含めて解析する。また、酵素活性と遺伝子発現のデータを統合し、親いも肥大と密接にかかわる生理的な変化を明らかにする。 本課題の研究目的の1つは、立型の草姿と塊根収量との関連解析である。「九州199号」と「コガネセンガン」のF1系統群のうち、2022年の予備調査で直播での塊根収量(子いも収量)が高かった系統について、草型、個葉の光合成活性(クロロフィルa/b比、光合成速度)、光利用効率などの地上部形質の測定値と塊根収量との関連を比較する。
|