2021 Fiscal Year Annual Research Report
アクチノリザル樹木の根粒共生に関わるケミカルコミュニケーション機構の解明
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21H02254
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
河合 真吾 静岡大学, 農学部, 教授 (70192549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 夕子 静岡大学, 農学部, 准教授 (90638595)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アクチノリザル共生 / 環状ジアリールヘプタノイド / 根毛変形因子 / 共生シグナル物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
アクチノリザル樹木は、窒素固定能を有する放線菌フランキアと根粒共生することで窒素源を早期に獲得し成長する。研究代表者らは、樹木が特異的に生合成する環状ジアリールヘプタノイドが、この根粒共生の初発のシグナル物質として関与していることを明らかにしている。 今年度は、このジアリールヘプタノイド化合物の縮合反応を触媒すると予想されているポリケチドシンターゼ(PKS III)を特定する目的で、当研究室保有のオオバヤシャブシ次世代シーケンスデータをもとに単離した3つのPKS III遺伝子全長を、マルチプラスミド法を用いて大腸菌に導入して、直鎖型のジアリールヘプタノイドが生合成されるかを検討した。その結果、単独酵素はもちろん2種の酵素を組み合わせても目的の骨格は形成されず、別の遺伝子が存在し、部位あるいは季節特異的に発現している可能性が考えられた。そこで、葉部、雄花序、雌花序、若枝茎部など複数の部位からRNAを単離し、次世代シーケンス解析に供した。 一方、フランキア側からのシグナル物質である根毛変形因子については、これまでに当研究グループで確立したフランキア培養液によるオオバヤシャブシ根毛変形を指標として、ゲルろ過クロマトグラフィーによる分画を開始した。その結果、予想通り分子量2000以上の画分に活性が集中し、部分精製された活性物質を回収することに成功した。しかしながら、回収量は僅かであり、NMR分析等で構造を明らかにすることは困難であった。今後は大量培養や樹木抽出成分の添加の影響などを検討し、根毛変形因子の回収と構造決定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
樹木側のシグナル物質と予想される環状ジアリールヘプタノイドの生合成遺伝子については、マルチプラスミド法によって複数の遺伝子を発現することは成功したものの、骨格形成には至らなかった。しかしながら実験手法が確立できた点は順調な成果だと考えている。また、単離された3つの遺伝子で反応が進行しないことも想定しており、新たな部位におけるRNAの回収とシーケンス解析の委託に至っており、次年度の展開につなぐことができた。 また、フランキア側からのシグナル物質である根毛変形因子は、その回収量が極めて少ないことがわかり、構造推定には至っていないが、ゲル濾過クロマトグラフィーにおいて活性画分が特定できた点は大きな進展であると考えている。 したがって、今年度の成果は概ね順調に進展していると結論した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度複数の部位より単離したRNAの次世代シーケンスデータの委託分析を待っていることろであるが、これらデータのできるだけ早い解析を行う予定にしており、これまでに単離した酵素遺伝子とは異なる縮合酵素遺伝子を特定、回収することが次年度の樹木側のシグナル物質の研究に関する第一の目的である。 また、フランキア側の根毛変形因子に関しては、大量回収法の検討が重要であると考え、フランキア培養系を大きくし回収培養液を増やすことに加え、樹木側からのシグナル物質(あるいはシグナル物質を含む抽出成分)の添加の影響によって、根毛変形因子の生成量を増大させるかどうかを検討することとしている。これらの点を改良することで、根毛変形因子の大量回収とクロマトグラフィーによる分画を早急に進め、部分的でもその構造に関する情報を得たいと考えている。
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Research Products
(2 results)