2021 Fiscal Year Annual Research Report
Sustainable development of farm producers in Japan and China
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21H02295
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 順一 京都大学, 農学研究科, 教授 (80356302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 慎一 京都大学, 農学研究科, 准教授 (20434839)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 技術効率性 / 農地貸借 / 政策評価 / 取引費用 / 日本型直接支払制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,日中両国で多様な展開をみせる農業経営体の経営成果や持続的発展の可能性をマイクロ・データに基づいて,比較・評価することにある。これまで農業経営体に対する農業経済学者の関心は,おもに家族経営に向けられていたが,少なくとも日本・中国に関していえば,新たな経営体の存在を無視できない。両国における農業経営の現状を理解し,将来の担い手像を探ることが,本研究のライトモチーフである。 本年度は,甘粛省農業科学院の協力を得て,中国甘粛省蘭州市,白銀市,臨夏州,定西市の農村で聞き取り調査を実施した。調査対象は上記4市からランダムに抽出された205の村民委員会である。調査の目的は,農民専業合作社の事業展開が,村の農業生産・農家経済に及ぼす影響を把握することにある。予備的な計量分析の結果,以下の事実が明らかとなった。(1) 合作社はとくに生化学過程(biochemical process)における技術効率性の改善に寄与しており,とくに中国農業で深刻化している肥料の過剰投入問題の解決に資するものと考えられる。(2) 合作社が主導する農地貸借は,生化学過程および機械過程(machinery process)における技術効率性を改善する。(3) 合作社が行う事業は,農地取引の費用を節減し,貸借市場の発展に寄与する。ただし,合作社が直営農場を開設した場合,BC過程の効率性に問題が生じる。これは農業経済学で伝統的に支持されている,農場規模と土地生産性の逆相関を意味する。 日本に関しては,中山間地域等直接支払交付金の制度設計に関して,理論的・実証的分析を行い,以下の事実を明らかにした。(1) 交付金の受領資格を厳格化することで,補助金交付の政策効果が保証される。(2)交付金制度への参加確率が高い集落ほど,政策効果も高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
甘粛省農業科学院の協力により,コロナ禍にもかかわらず,当初の計画通りに現地調査を実施し,計量分析に資するデータを入手することができた。予備的な計量分析の結果は,当初設定した仮説の妥当性をほぼ肯定するものである。 また甘粛省の県パネル・データを使った研究成果が,海外の一流学術雑誌(Land Use Policy)に掲載された。また,日本型直接支払制度に関する研究成果も,海外の一流学術雑誌(Ecological Economics)に掲載された。以上のことから,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は引き続き中国甘粛省で,農家および農家以外の農業事業体の環境保全型農業への取り組みに関する聞き取り調査を実施する。また,日本に関しては,センサスの市長村パネル・データを利用して,農地および農村共有資源の保全に関する実証分析を試みる。
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