2022 Fiscal Year Annual Research Report
宿主因子の制御による重症インフルエンザの新規治療法の研究開発
Project/Area Number |
21H02376
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大野 円実 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 助教 (50794202)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インフルエンザ / 宿主因子 / LOX-1 / 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度から継続の2022年度の研究において、宿主因子Lectin-like oxidized LDL receptor-1 (LOX-1)が重症インフルエンザによる血液凝固異常を引き起こすことを明らかにし、LOX-1ノックアウトマウスにおいて複数の血液凝固異常パラメータの上昇が抑制されることを確認した。さらに、COV ID-19ハムスターモデルおいてもLOX-1の発現量上昇が見られたことから、LOX-1が多様なウイルス感染症において血液凝固異常を引き起こす可 能性が示唆された。さらに、インフルエンザウイルス感染臓器への一部の免疫細胞集団の遊走にLOX-1が必須であることを明らかにした。これまでに用いてきた重症インフルエンザモデルに加え、低ウイルス量を感染させ長期間に渡って感染臓器の経過を観察する系を確立し、野生型マウスとLOX-1ノックアウトマウスにおいてこれを実施したところ、後者において組織修復の遅れが観察された。よって、宿主因子LOX-1はインフルエンザ急性期においては血管内血液凝固異常を引き起こすが、長期的には免疫細胞の遊走などを促進し宿主の生残に寄与する可能性が考えられる。 また、一部のリン脂質及びその過酸化代謝物の増加に伴うフェロトーシスがインフルエンザの重症化に関与する可能性を見出し、新たな治療標 的及び重症度評価指標として有用であることが示唆された。フェロトーシス阻害剤を用いた実験系を確立し、重症インフルエンザマウスモデルへの適用のための予備試験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載の進行計画では、2022年度は重症インフルエンザにおける血液凝固異常に関わる宿主因子の同定、同定した宿主因子の抑制による血液凝固異常の改善の検証を行うことができたため。また、その他の感染症への応用として、COVID-19ハムスターモデルを用いた検証を行い、そのほかの感染モデルでの予備検討も開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、フェロトーシス阻害剤を用いて重症インフルエンザの症状の改善が可能かどうかを検討する。そのためにRNA-seq解析、組織学的解析、血清学的解析を行う予定である。 また、LOX-1がインフルエンザ以外の感染症において果たしている役割を理解するために、野生型マウス及びLOX-1ノックアウトマウスにインフルエンザウイルスPR8株以外のウイルス(候補ウイルス:SARS-CoV-2マウス適合株、カソケロウイルスなど)を実験感染させ、リピドーム解析及び感染臓器サンプルを用いたRNA-seq解析を行う。
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