2021 Fiscal Year Annual Research Report
愛情ホルモン・オキシトシンによる炎症免疫抑制作用の分子基盤の解明
Project/Area Number |
21H02695
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山本 靖彦 金沢大学, 医学系, 教授 (20313637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 貴史 金沢大学, 医学系, 教授 (60432126)
棟居 聖一 金沢大学, 医学系, 助教 (10399040)
木村 久美 金沢大学, 医学系, 助教 (60409472)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オキシトシン / 制御性B細胞 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
オキシトシンは、脳視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉から循環血液中に放出されるペプチドホルモンである。その抹消作用として、陣痛誘発時の子宮収縮や授乳時の乳汁分泌作用が良く知られており、最近では、中枢神経作用である信頼や愛情の形成に関わることも分かってきた。同時に、オキシトシンの免疫系への作用として、抗炎症効果や免疫抑制作用が報告されているが、その分子作用メカニズムに関しては全く不明であった。本研究においては、そのようなオキシトシンの免疫制御作用について、オキシトシン受容体依存的な観点から研究を行うとともに、オキシトシン受容体非依存的な効果についても調べ、その分子機構の全貌を明らかにすることを目的とする。 本研究においては、全身性エリテマトーデス(SLE)マウスモデル(MRL/lprマウス)を使って、オキシトシン持続投与による有効性を調べると、全身のリンパ節腫脹、皮膚の炎症、腎炎の病態が軽減し、抗dsDNA抗体や抗ssDNA抗体、抗核抗体などの自己抗体のタイターも低下し、その有効性が示された。免疫細胞において、オキシトシン受容体の発現を調べると、オキシトシン受容体の発現は一部のB細胞サブセットで確認できた。MRL/lprマウスの遺伝背景に、オキシトシン受容体欠損を導入したマウスを作製し観察すると、骨髄におけるB細胞分化が障害され、末梢血中のB細胞画分の低下が認められた。そして、SLEの病態は軽快しており、予想に反した表現系を示した。また、オキシトシンに結合する血清タンパク質である補体C4を同定し、直接の結合も確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、オキシトシン投与による全身性エリテマトーデス(SLE)マウスモデル(MRL/lprマウス)への有効性が確認できた。さらに、オキシトシン受容体を発現する免疫細胞を同定することができた。遺伝背景がMRL/lprマウスに、オキシトシン受容体欠損を導入したマウスの作製にも成功し、その病態解析も進んでいる。オキシトシンに結合する血清タンパク質・補体C4も新たに発見し、順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方については、当初の計画通りに進めて行く予定である。オキシトシン受容体依存的な観点からは、オキシトシン受容体を発現するB細胞のさらに詳細な解析を進め、B細胞がどのように炎症に対して抑制的に働くのかを調べていく。オキシトシン受容体欠損により、どのように骨髄におけるB細胞分化が障害されるのかを明らかにしていく。そして、B細胞の分化、特に、形質細胞への分化と自己抗体産生抑制に関わる機構を明らかにしていく。また、オキシトシン受容体非依存的な効果については、補体C4を介する作用機序の解明や、作製したC4ノックアウトマウスの解析を進めていく予定である。
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Research Products
(16 results)