2021 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive analysis of roles of endogenous virome during virus infection
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21H02738
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
本田 知之 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (80402676)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ウイルス / 内在性ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、常在細菌叢は、粘膜における感染防御や免疫制御などで重要な働きを持ち、1つの臓器として捉えられるようになってきた。一方で、同じ常在微生物叢であっても、常在ウイルス叢については、これまで体系だった解析は行われてきていない。本研究では、常在ウイルス叢として、内在性レトロウイルス(ERV)とレトロトランスポゾン、内在性RNAウイルス配列からなる「内在性ウイルス叢」を想定する。その上で、外来性ウイルス感染が内在性ウイルス叢にどのような変化をもたらし、その変化がどのようにウイルス感染に影響するのかを、体系的・統合的に明らかにする。本年度は、ウイルス感染による生じた内在性ウイルス配列の機能解析とレトロトランスポゾンの生理意義の解明を計画した。 その結果、本年度の研究においては、以下に示す結果を得た。 (1)RNAウイルスのボルナウイルスが感染により形成されたと考えられる内在性ボルナウイルス配列についてその機能解析を行なった。ヒトボルナウイルス配列-2がミトコンドリアに局在するタンパク質をコードしていることを明らかにした。このタンパク質が細胞生存に関わることを明らかにした。 (2)レトロトランスポゾンのアンチセンスプロモーターから発現するレトロトランスポゾン叢を、既に構築済みの独自の解析パイプラインを用いて解析した。その結果、このレトロトランスポゾン叢が、細胞増殖を制御していることが明らかとなった。 このように本年度は、内在性ウイルス叢の挙動とその意義について、概ね順調に解析を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題全体の研究計画では、2つの小課題を提案していた。 それぞれ、ウイルス感染により生じた内在性ウイルス配列の機能解析と、レトロトランスポゾンの生理意義の解明研究である。その結果、内在性ボルナウイルス配列ならびにLINE-1のアンチセンスプロモーターがそれぞれ細胞生存や細胞増殖に関わる可能性を見出すに至った。この知見は今後の研究の方向性を絞る上で、重要な知見である。また、内在性RNAウイルス配列についてはさらに、これまでの知見を総括し、今後の研究の方針を展望する論文を発表した。次年度では、ウイルス感染が誘導する内在性ウイルス叢の変化あるいは内在性RNAウイルス配列がもたらす抗ウイルス能を解明し、内在性ウイルス叢によるウイルス制御の実態解明を目指す。 全体として、当初の計画より若干の変更点はあるが、内在性ウイルス叢に関して大きな成果が出ており、本研究の目的達成に向けて当初の計画通り、概ね順調に進展していると考えられる。なお、途中で新型コロナウイルス流行により、研究計画の変更が必要となり、次年度の繰越を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた結果をもとにして、ウイルス感染が誘導する内在性ウイルス叢変化による抗ウイルス効果を探索する研究をさらに進める。一方で、特に内在性RNAウイルス配列については、フィロウイルスとの関連解析を進めたいと考えている。以下にこれらについて具体的な展望を示す。 (1)RNA-seqやリアルタイムPCRを用いて、候補内在性ウイルスを絞り込み、その過剰発現・ノックダウンを介して、候補内在性ウイルスに抗ウイルス防御効果があるかBoDVをモデルとして検討する。 (2)内在性RNAウイルス配列として、内在性フィロウイルス配列に着目し、新しい内在性フィロウイルス配列の探索を行う。得られた内在性フィロウイルス配列とフィロウイルス感染(フィロウイルス複製)との関連性を明らかにする。
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