2022 Fiscal Year Annual Research Report
乳がんゲノム遺伝子変異の不均一性及び幹細胞階層性の1細胞レベル統合解明
Project/Area Number |
21H02761
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
後藤 典子 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (10251448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 穣 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40323646)
岡本 康司 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (80342913)
廣瀬 遥香 名古屋大学, 医学系研究科, 客員研究者 (90764754)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | がん幹細胞 / トリプルネガティブ乳がん / シングルセル / 不均一性 / 治療抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,トリプルネガティブ乳がん組織内のがん幹細胞集団内に潜んでいる,最も治療抵抗性のがん幹細胞亜集団を見つけ出すため,患者様由来のがん組織を用いた。NRP1もしくはIGF1Rに対する抗体を用いて,がん幹細胞を濃縮したのち,バラバラにして,シングルセルRNAシークエンスを行い,1細胞ごとに発現している遺伝子を網羅的に解析した。その結果,NRP1もしくはIGF1R抗体によって濃縮されたがん幹細胞集団は,5つのクラスター(集団)に分かれることを見いだし、がん幹細胞は,トリプルネガティブ乳がんが発生するとされる,乳腺前駆細胞とよく似た性質を示していたため,「祖先がん幹細胞」と名づけた。祖先がん幹細胞は抗がん剤に対して最も治療抵抗性を示すことが分かった。また,細胞膜タンパク質FXYD3を強く発現するため,FXYD3に対する抗体を用いて取り出せることも分かった。FYXD3は,Naイオンを細胞外へ排出しKイオンを細胞内へ取り込むNa-Kポンプを細胞膜上で保護する役割を持っている。Na-Kポンプの阻害剤である強心配糖体を投与すると,祖先がん幹細胞の治療抵抗性が弱まって,抗がん剤で死滅させられることが分かった。 最後に,術前全身治療前後のトリプルネガティブ乳がん組織を調べた結果,治療に反応せず残存したがん細胞が,強くFXYD3を発現してた。これらの結果から,術前全身治療の際に強心配糖体を加えることによって,トリプルネガティブ乳がんの再発を予防できる可能性が示された(Li M, Gotoh N[corresponding author], J Clin Invest, 2023)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.トリプルネガティブタイプ乳がん5検を10xGenomicsとFluidumのC1 single cell-prep systemにより微量RNAシークエンスを行った。SEURAT (https://satijalab.org/seurat/)を用いたバイオインフォマティクス解析を行なった。得られた親玉がん幹細胞を「祖先がん幹細胞」と名づけた。祖先がん幹細胞は、さらなる解析により、細胞膜タンパク質FXYD3を強く発現するため,FXYD3に対する抗体を用いて取り出せることも分かった。Na-Kポンプの阻害剤である強心配糖体を投与すると,祖先がん幹細胞の治療抵抗性が弱まって,抗がん剤で死滅させられることが分かった。 2.術前全身治療前後のトリプルネガティブ乳がん組織を調べた結果,治療に反応せず残存したがん細胞が,強くFXYD3を発現していた。これらの結果から,術前全身治療の際に強心配糖体を加えることによって,トリプルネガティブ乳がんの再発を予防できる可能性が示された。 3.乳がんPDXを用いた、細胞分画ごとの1細胞ゲノム遺伝子変異解析より得られる、ゲノム遺伝子変異の不均一性の解明を行っている。すでにIGF1Rhigh, IGF1Rlow, NP1high, NP1lowをセルソーティングにより分画し、エクソームシークエンスを行った。ここからそれぞれの分画に濃縮する変異をもつがん遺伝子がん抑制遺伝子群を100-200個程度選びだし、ゲノム遺伝子パネルを作成した。ゲノム遺伝子パネルを元に、ごく最近市場に出されたタペストリを用いて、~10,000細胞の1細胞ごとに、ゲノム遺伝子パネルに含まれる遺伝子の変異とともに膜タンパク質FXYD3を含む数個の発現レベルを解析した。 4.PDXモデルを用いて、空間トランスクリプトーム解析を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム遺伝子パネルを元に、ごく最近市場に出されたタペストリを用いて、~10,000細胞の1細胞ごとに、ゲノム遺伝子パネルに含まれる遺伝子の変異とともに一個の膜タンパク質FXYD3 を含む数個の発現レベルを解析した。これを基に、ゲノム不均一性と幹細胞を中心とする機能不均一性を統合的に解明する。 PDXモデルを用いて、空間トランスクリプトーム解析を行なったので、今後これまでの経験を活かしてSeuratプラットフォームなどを活用し、解析していく。
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