2021 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロサテライト高度不安定性がんの免疫回避メカニズム解明
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21H02772
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
河津 正人 千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ 細胞治療開発研究部, 部長 (20401078)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川添 彬人 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (20754675)
波江野 洋 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任准教授 (70706754)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸癌 / マイクロサテライト不安定性 / 腫瘍免疫 / ロングリードシーケンサー / 転写バリアント / 免疫チェックポイント阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロサテライト高度不安定性(MSI-H)腫瘍に対して免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は顕著な効果を示し臨床上の有用性が示されているが、少なくとも半数程度の症例に対しては十分な効果が得られない。本研究課題ではゲノム異常に由来する転写制御異常と腫瘍免疫の相互作用の詳細な分子メカニズムを解明し、ICIをはじめとした腫瘍免疫療法の改良・開発のための基礎的知見を得ることを目的とする。 本年度はロングリードシーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を行うための、解析パイプラインの整備を進めた。申請者らはこれまでの研究において解析パイプラインMuSTAを構築したが、ロングリードシーケンサーの技術開発の進歩に合わせて解析パイプラインを修正・アップデートし、動作確認、精度評価等を行なった。さらにパイプラインを実装し、大腸がん細胞株のトランスクリプトーム解析を始めた。 大腸がん細胞株のトランスクリプトームを適切にシーケンスすることが可能で、さまざまな転写バリアントの全長配列を決定することが可能であった。およそ1万の遺伝子が検出され、およそ75%の遺伝子については複数の転写バリアントが検出された。20%の遺伝子については6個以上の転写バリアントが検出された。転写制御に関わる遺伝子発現を実験的に抑制させた細胞株において、転写バリアントの構成が変化する遺伝子も複数同定した。 並行して、ICIを投与されたMSI-H腫瘍のゲノム解析を進め、MSI-H腫瘍におけるICI治療有効性と関連するゲノム異常の探索を進めた。PTEN変異、とくにフォスファターゼドメインの変異を有する症例においては、腫瘍微小環境の免疫が抑制されており、ICI治療への反応性が悪いことを明らかにし、論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MSI-H大腸がんの腫瘍免疫の状態を規定するゲノム異常の解析を進めることが出来た。挑戦的なテーマとして目標にしたロングリードシーケンサーを用いた網羅的トランスクリプトーム解析は順調に進捗しており、さまざまな転写バリアントの全長配列を高精度で決定し、それらの機能的意義の解明を進めるための基礎的データを取得することが出来た。 実際の臨床検体の解析においては、細胞表面に抗原を提示するHLAクラスI遺伝子の変異やPTEN変異と腫瘍微小環境の免疫状態の関連を明らかにし、論文発表することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に取得した全長トランスクリプトームデータの詳細な解析を進める。 機能的に重要な意義を有する遺伝子の転写バリアントの変化を解析する。具体的には、RT-QPCRを行い、転写バリアントの変化を定量的に確認する。変化の確認された転写バリアントに関しては、ウェスタンブロッティングによりアイソフォームの存在確認を試みる。また転写バリアントの発現ベクターを作成し、培養細胞に強制発現させ、転写バリアントの違いによるタンパク質機能の違いを評価する。 また、トランスクリプトームの全体像を解析する。全体としてスプライシングの変化が生じているのか、それによりタンパク質コード領域の変化が生じているのか、遺伝子発現量への影響は見られるのか、MSI-H腫瘍に見られる変異と関連するスプライシング異常は存在するのか、等の解析を行い、がんにおけるスプライシング制御とそれに影響を与える因子の解明を目指した解析を進める。 上記解析を通じて、転写バリアントやスプライス異常が腫瘍免疫・腫瘍免疫微小環境に与える影響についての解析を進め、腫瘍免疫状態の予測や治療開発につながるような知見の獲得を目指す。
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Research Products
(14 results)