2022 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチン3次元構造調節因子CTCFの 子宮体がんにおける下流因子の解明
Project/Area Number |
21H02793
|
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
森 誠一 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター 次世代がん研究シーズ育成プロジェクト, プロジェクトリーダー (10334814)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 玲緒 公益財団法人がん研究会, がん研究所 がんエピゲノムプロジェクト, プロジェクトリーダー (60607985)
杉山 裕子 公益財団法人がん研究会, 有明病院 細胞診断部, 部長 (80322634)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 子宮体がん / エストロゲン受容体 / CTCF |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではCTCF の変異による、類内膜性子宮体がんのエストロゲン非依存性の獲得、ならびにがん化の機序を明らかにする。 多様ながん種でCTCF に変異を認め、特に子宮体がんでその頻度が高く、がん化に関わるドライバー遺伝子と考えられているが、その分子機序は不明である。本研究では、クロマチン3次元構造に着目し、CTCF の下流因子を、特にER 活性調節とDNAメチロームに注目しながら探索する。本研究により子宮体がんのエストロゲン非依存性の獲得とがん化の過程におけるCTCF の役割が明らかになり、新規分子標的治療・ホルモン療法の開発につながるものと期待される。 1) CTCF 変異によるDNA メチローム・トランスクリプトームの変化を測定する目的で、既存オミックスデータ(子宮体がん69 症例、子宮・卵 巣がん肉腫109 症 例)について、統合解析を進め、転写ドメイン内外における遺伝子発現の相関や、エンハンサーのDNA メチル化による近傍遺伝子の発現変化を調べた。TCGA の子宮体がんのオミックスデータを用いて、検証解析を行った。TCGAデータでは、CTCFおよびコヒーシン複合体構成分子の変異により、CTCF結合部位のメチル化が確認できた。自験例ではCTCF変異子宮体がんはエストロゲン受容体結合部位のメチル化が亢進していたが、TCGAデータでは亢進していなかった。 2) 臨床検体で得られた知見が細胞株でも観察できるかどうか確認する目的で、CTCF 野生型・変異型それぞれ3種類の類内膜性子宮体がん細胞株について、エク ソーム解析によりCTCFを含む子宮体がんドライバー遺伝子の変異を確認した。CTCF 変異型の細胞株においてエストロゲン反応性の低下は認められなかった。 3) 子宮体がんの手術検体ならびに臨床情報を、前向きに収集した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CTCF 変異体の子宮体がんにおいて、自験例とTCGA データベースの結果と齟齬があり、またCTCF 変異体の細胞株でエストロゲン反応性の低下が認められないなど、当初の想定から外れた結果が得られてはいるが、進捗として遅滞はなく、おおむね順調に進展していると考えている。 1) CTCF 変異によるDNA メチローム・トランスクリプトームの変化を測定する目的で、既存オミックスデータだけでなく、前がん病変などについても、統合解析を順調に進めた。前年度に開発したDNA メチル化による近傍遺伝子の発現変化を調べる手法を用いて、メチル化の程度と遺伝子発現との相関が指標になることを明らかにし た。TCGA の子宮体がんのオミックスデータを用いて、検証解析を行い、TCGAデータでは、CTCFおよびコヒーシン複合体構成分子の変異体における、CTCF結合部位 のメチル化が確認できたが、TCGAデータではエストロゲン受容体結合部位のメチル化亢進が観察されず、エストロゲン受容体経路のFOXA2, ZFHX3の発現低下も認めなかった。解析自体は順調であり、原因は不明であるが、TCGAではネガティブな結果であることが判明した。 2) 臨床検体で得られた知見が細胞株でも観察できるかどうか確認する目的で、CTCF 野生型・変異型それぞれ3種類の類内膜性子宮体がん細胞株について、エク ソーム解析によりCTCFを含む子宮体がんドライバー遺伝子の変異を確認した。CTCF変異体の細胞株で、エストロゲン反応性の低下は認められなかった。解析自体は順調であり、原因は不明であるが、細胞株では予想した結果を得られないことが判明した。 3) 子宮体がんの手術検体ならびに臨床情報を、前向きに順調に収集した。
|
Strategy for Future Research Activity |
自験コホートとTCGAにおいて、CTCF変異の下流においてエストロゲン受容体シグナルの反応性が大きく異なっており、CTCF変異体細胞株においてもエストロゲン反応性の低下は認めなかった。解析自体および臨床検体と臨床情報の収集は順調に進んでいるが、当初考えていた仮説が、エストロゲン受容体シグナルという点についてTCGAと細胞株では成立していないことが判明したものである。現在、腫瘍形成過程における子宮内膜の発生や分化に重要な転写因子の結合部位のDNAメチル化・遺伝子発現変化に着目し、腫瘍形成過程におけるそれらの転写因子の活性の変化を見るなど、CTCF-エストロゲンに拘泥せずに研究を推進している。現在、子宮内膜の発生や分化に重要な転写因子のうち、SOX17, FOXA2, HNF1Bなどの活性化、HAND2などの不活性化など、腫瘍形成過程におけるそれらの転写因子の重要性を示唆する結果が得られている。
|
Research Products
(7 results)
-
-
-
-
[Journal Article] Genomic features of <i>Helicobacter pylori</i> ‐na?ve diffuse‐type gastric cancer2022
Author(s)
Namikawa Ken、Tanaka Norio、Ota Yuki、Takamatsu Manabu、Kosugi Mayuko、Tokai Yoshitaka、Yoshimizu Shoichi、Horiuchi Yusuke、Ishiyama Akiyoshi、Yoshio Toshiyuki、Hirasawa Toshiaki、Amino Sayuri、Furuya Rie、Gotoh Osamu、Kaneyasu Tomoko、Nakayama Izuma、Imamura Yu、Noda Tetsuo、Fujisaki Junko、Mori Seiichi
-
Journal Title
The Journal of Pathology
Volume: 258
Pages: 300~311
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-