2021 Fiscal Year Annual Research Report
Pathophysiological roles of convulsive neurological disease-causing gene PRRT2 in neurotransmitter release
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21H02809
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岩田 修永 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (70246213)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジスキネジア / PRRT2 / 大脳基底核 / 線条体 / ドーパミン / ドーパミントランスポーター / マイクロダイアリシス / ノックインマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳基底核運動ループに焦点を当て、発作性運動誘発性ジスキネジア(PKD)関連分子PRRT2の病態生理学的役割を明らかにする目的で研究を行った。 ・ 研究代表者は線条体の神経興奮依存的なドーパミン(DA)放出がPrrt2に変異によって顕著に増加することを見出しているが、病態との関連を議論するためにはこのような神経伝達物質の放出増加がDAニューロンまたは線条体に特異的な現象か、他のニューロンサブタイプや脳部位においても共通する現象なのかを明確にする必要がある。そこで、野生型およびPrrt2 ノックイン(KI)マウスの線条体でマイクロダイアリシスを行い、定常時および神経興奮時のグルタミン酸、GABAの細胞外濃度を比較した。その結果、これらの神経伝達物質の細胞外放出量は両系統のマウス間で差が無かったことから、Prrt2は少なくとも線条体ではDA特異的な神経伝達の制御に関わることが分かった。 ・ マウス線条体におけるPrrt2とシナプスマーカー分子との共局在性を二重免疫染色法と超解像度顕微鏡で解析した結果、Prrt2は主にプレシナプスの細胞表面に局在することが明らかになった。 ・ これまでに、ド-パミントランスポーター(DAT)とPRRT2を共安定発現するNeuro2A細胞ではDAT単独またはDATとPKD関連変異を持つPRRT2の共安定発現細胞よりもDA再取り込み活性が低いこと、PRRT2が神経興奮によりカルボキシ末端側の細胞内領域で切断されることを見出している。今年度はDATを安定発現したNeuro2A細胞に非切断型PRRT2変異体またはPRRT 2の12K-CTFをそれぞれ二重に安定発現細胞の作製を進めた。一次スクリーニングが終了し、現在それぞれのPRRT2変異体を検出するWBとFFN102 (DAの蛍光アナログ) の細胞内取り込み量を指標に二次スクリーニングを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究成果の概要」に記載した通り、令和3年度に計画した研究内容【項目1,2,5】はほぼ達成できている。さらに、【項目3】に記載した令和4年度に視床-大脳皮質ループに注目してPrrt2のPKDに及ぼす責任脳領域をさらに詳細に調べるための準備段階として、マウスの視床(視床外側腹側核+視床前腹側核)から投射を受ける大脳皮質(一次運動皮質M1領域)にマイクロダイアリシスプローブを挿入する座標を決定した。現在、定常時および神経興奮時のDA、グルタミン酸、GABAの細胞外濃度を測定している。 【項目5】は令和4年度も引き続き継続する研究内容であるが、現在までに、DATと比較して、それぞれのPRRT2変異体を相対的に高発現または低発現するクローンを得ているため、予定通り本年度中に実験が完了する見込みである。 以上の理由により、本研究課題が概ね順調に進行していると判断し、(2) を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画調書に沿って本研究課題を進める。令和3年度から継続する【項目2,5】は年度内に完遂する。【項目2】マウスの線条体でマイクロダイアリシスを行い、定常時および神経興奮時の細胞外神経伝達物質濃度を野生型およびPrrt2 KIで比較する研究では、マウスの週齢(4-8週齢)で両マウス系統間で神経興奮を誘発した際の神経伝達物質放出量の変化の度合いが異なることを示唆する結果を予備的実験で得ており、研究協力者を増員してさらに詳細に解析していく予定である。 【項目3】 Prrt2変異が大脳皮質-大脳基底核ループの活動性に与える影響の解析 Prrt2変異により線条体で神経興奮依存的な DA放出が顕著に増加することがPKD発作を引き起こすという研究代表者の仮説を実証するため、線条体刺激時の大脳皮質の興奮性の変化を調べる。(方法) 野生型およびPrrt2 KIマウスの線条体に神経興奮を誘導し、大脳皮質の細胞外グルタミン酸濃度をマイクロダイアリス法により測定し比較する。同時に線条体の細胞外DA濃度もモニターし、大脳皮質のグルタミン酸濃度との相関性を調べる。 【項目4】 Prrt2による細胞外神経伝達物質量の恒常性維持制御機序の解析 PRRT2が神経活動時に細胞外のDAまたはその他の伝達物質量を制御する分子機構を各種阻害剤を用いて薬理学的に明らかにする。 (方法) 野生型およびPrrt2 KIマウスの線条体に、開口放出阻害剤 (カルシウムキレーター: BAPTA-AM)または再取り込み阻害剤 (DAT阻害剤やVMAT2阻害剤)等の薬剤をマイクロダイアリシスの灌流液から投与した後、KClで神経興奮を誘導して、細胞外神経伝達物質濃度を測定する。
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