2021 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞がんにおける多細胞間相互作用の解明による新規がん免疫療法開発の基盤研究
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21H02899
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
水腰 英四郎 金沢大学, 医学系, 准教授 (90345611)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 腫瘍微小環境 / T細胞レセプター / 抗原エピトープ / 遺伝子改変T細胞 / 抗腫瘍免疫 / CD8T細胞 / 腫瘍関連抗原 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、腫瘍微小環境を構成し、抗腫瘍免疫に関与する未知の細胞や背景肝因子を同定するとともに、抗原特異的T細胞との細胞間相互作用を明らかにすることによって、肝がんに対する新規免疫療法開発の基盤研究を行うことを目的としている。本年度は、これらの研究を実施するための臨床検体の選択とツールの作製に関して、以下の研究を実施した。 はじめに、これまで外科的切除を実施した肝細胞癌患者の保存検体を用いて、腫瘍と腫瘍周囲背景肝組織に浸潤している各種免疫細胞を免疫組織染色によって同定した。各種免疫細胞のうちCD8陽性T細胞の検討では、腫瘍内部への浸潤を認める陽性群と認めない陰性群に分類することが可能であった。また、腫瘍周囲への浸潤に関しても陽性群と陰性群に分類可能であった。腫瘍内部へのCD8T細胞浸潤陽性群では、陰性群と比較して脈管侵襲陰性例が有意に多く、単発例が多い傾向にあった。切除後無再発生存に寄与する独立した因子として、最大腫瘍径、分化度とともに、腫瘍内部へのCD8T細胞浸潤陽性が抽出された。このことから、肝細胞癌では腫瘍細胞と各種免疫細胞との腫瘍内での応答が患者予後の決定因子の1つであることが示唆された。今後、これらの細胞間相互作用に関して、単一細胞解析によって明らかにしていく予定である。 本年度ではさらに、肝細胞癌に特異的な腫瘍関連抗原であるAFPおよびhTERT由来エピトープを特異的に認識するT細胞レセプター(TCR)の遺伝子を用いて、今後、細胞間相互作用解析に使用するための、抗原特異的TCR遺伝子改変T細胞の作製を実施した。作製されたTCR遺伝子改変T細胞は、抗原特異的に肝癌培養細胞に対して細胞傷害活性を発揮した。これらの技術は治療への応用が可能であるとともに、今後細胞間相互作用を明らかにするための研究ツールとして使用が可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の解析に使用する臨床検体と解析ツールの1つであるT細胞レセプター(TCR)遺伝子改変T細胞に関して、臨床検体の選択およびTCR遺伝子改変T細胞の作製に関しては順調に進行している。 もう1つの解析ツールである肝癌マウスモデルの作製に関しては、作製技術は確立しているものの、解析に必要な匹数に到達しておらず、今後も作製の継続が必要である。また、臨床検体を用いた単細胞発現遺伝子解析に関して、当初の予想よりも費用が高額となり、研究手法の修正が必要であると考えている。多数の保存検体を用いた単細胞発現遺伝子解析に代わる手法として、蛍光色素を用いた多重染色によって、各種免疫細胞の位置情報および機能を推測する手法を確立し、これらを用いた予備的検討を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト肝癌組織を用いた単細胞発現遺伝子解析に関しては、少数例での解析にとどめ、先に免疫組織染色を実施し、患者予後との解析が終了している多数の保存検体を用いた解析は、蛍光色素を用いた多重染色によって、各種免疫細胞の位置情報および機能を推測し、細胞間相互作用を明らかにする手法を実施する。 TCR遺伝子改変T細胞、肝癌マウスモデルを用いた検討は、当初の予定どおりに遂行する。
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