2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H02908
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 和孝 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60375798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 守俊 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00323501)
瀧本 英樹 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20709513)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / 血管周囲脂肪組織 / 脂肪褐色化 / 炎症 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】 動脈におけるストレス応答の結果として生じる病的血管リモデリング(いわゆる動脈硬化)は血管恒常性維持システムの破綻といえる。複雑な血管リモデリングのメカニズムを本質からとらえ新たな治療シーズを見出すには血管組織の総体から病態のダイナミズムを時間・空間的に理解することが不可欠である。そこで本研究では、近年急速な進歩を続ける1細胞RNA seq解析をはじめとする多角的な検討によって病的血管リモデリングを決定づける因子の探索を行い、動脈硬化性疾患の新たな治療法の開発の基盤構築につながる動脈硬化形成メカニズムの統合的理解を目指す。
【手法・結果】 我々はマウス大腿動脈においてワイヤーによる血管内皮傷害モデルを作成し、血管傷害により血管周囲組織にマクロファージが多数集積していることを見出した。血管周囲組織のRNAシーケンス解析を足掛かりに、我々は、血管傷害により血管周囲脂肪組織(pereviscular adipose tissue; PVAT)が褐色脂肪化することを突き留めた。そしてβ3受容体刺激薬(CL316243)によりPVATの褐色化を促進すると、血管傷害後の炎症性変化が減弱し血管リモデリングは有意に抑制されることを見出した。さらに、マウス脂肪組織を用いた1細胞解析により、褐色化刺激によって脂肪組織でNrg4 (neuregulin4)の遺伝子発現が亢進することを見出した。Nrg4を抑制すると、血管傷害後の血管炎症とリモデリングが増悪した。
【成果】 マウス病態モデルと1細胞解析により、PVATの褐色化がNrg4の分泌亢進を介して血管炎症やリモデリングを抑制していることが示された。本成果は動脈硬化性疾患の形成メカニズムに新しい洞察を与えるものであり、今後、動脈硬化の新たな治療ターゲットとして研究が進展することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織1細胞解析やマウスモデルを用いた検討は計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
オプトジェネティクスを用いた時間空間的任意性を持った遺伝子制御法の樹立と、その技術を用いた分子機能解析をマウスモデルで進める。
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