2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H02933
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
安藤 史顕 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (80804559)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | AQP2 / PKA / AKAP / 腎性尿崩症 / 肥満症 |
Outline of Annual Research Achievements |
当腎臓内科学教室では、バゾプレシン/cAMP/PKAシグナルが体内の水恒常性維持を担うAQP2水チャネルを活性化し、尿を濃縮する機構を解明してきた。先天性腎性尿崩症は、バゾプレシン2型受容体(V2R)の機能喪失型変異により尿濃縮機構が破綻し多尿をきたす疾患である。従来の治療戦略は、障害されたV2Rを介さずに細胞内のcAMPを活性化する方法であり、phosphodiesterase阻害薬やGPCRアゴニストなどの効果が検証されたが、治療薬の実用化には至っていない。そこで、申請者はPKAの直接活性化に着眼し、腎性尿崩症モデルマウスの尿量を劇的に減少させる低分子化合物FMP-API-1/27を発見した。FMP-API-1/27には、PKAとPKAのアンカータンパクであるA-kinase anchoring proteins (AKAPs)との結合を阻害する作用があり、既存の化合物には無い高いAQP2活性化効果を発揮した。本研究では、この新規化合物の作用機序と標的タンパクの同定を突破口として尿濃縮に直結する新規PKAシグナル伝達系を解明するとともに、リード化合物FMP-API-1/27の誘導体展開や類似構造を指標としたin silicoのスクリーニングにより多数のPKA活性制御薬の開発を進める。合成した化合物の中には、尿濃縮効果がないが、肥満症の治療標的である褐色脂肪細胞のPKAを活性化するものがあり、他のPKA関連疾患の解析も進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PKAはユビキタスに発現しているが、50種類以上のAKAPと4種類のPKAサブユニットの結合の組み合わせは臓器・細胞により異なるため、特定のAKAP-PKA結合を切断することで組織特異的にPKA活性を制御できる。我々は、RNA-Seqやプロテオミクス解析で同定された腎臓集合管に発現する全てのAKAP-PKA結合の組み合わせを免疫沈降法により評価し、FMP-API-1/27がLRBAとPKAとの結合を特異的に阻害していることを明らかにした。 LRBAは、T細胞においてCTLA4受容体へ結合し、CTLA4受容体の細胞膜への輸送を調節する。AQP2水チャネルも尿から水を再吸収する際に細胞膜への輸送が必要になることから、T細胞と腎臓集合管には類似の制御機構が備わっていると考えられた。そこで、Lrbaノックアウトマウスを作成し腎臓における表現型を検証したところ、AQP2の活性が低下し多尿を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
腎臓におけるLRBA の役割やLRBAにPKAが結合することの生理学的意義は不明である。そこで、LRBAとAQP2が腎臓集合管において共局在するかを明らかにし、LrbaノックアウトマウスにおけるAQP2のリン酸化動態やバゾプレシンへの反応性を検証する。また、腎臓に発現するチャネルや輸送体は、その多くがvesicle recyclingによって活性を制御されており、LRBAが及ぼす影響を解析していく。 褐色脂肪細胞においてPKA活性化効果を発揮した化合物Xは、高脂肪食肥満モデルマウスに16週間経口投与すると、β3受容体アゴニスト(ミラベグロン)とは対照的に心拍や血圧に影響なく熱産生や抗肥満効果を発揮した。化合物Xが標的とするPKA基質の同定を進めていく。
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