2021 Fiscal Year Annual Research Report
疾患関連変異のタンパク質構造上の三次元分布を基点とした未知の機能部位探索法の確立
Project/Area Number |
21H03551
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
今井 賢一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (80442573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土方 敦司 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (80415273)
本野 千恵 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (80415752)
足達 俊吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (90783803)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 疾患関連変異 / 疾患関連変異分布 / クリプトサイト / アロステリックサイト / タンパク質機能推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、疾患関連変異をタンパク質の立体構造上でのクラスタ(3D変異クラスタ)という単位でとらえ、3D変異クラスタを基点としたタンパク質の未発見の機能部位探索法を提案するものである。研究初年度となる本年度では、1261個の構造既知のヒトのタンパク質構造に対し、ClinVarに登録されている疾患関連変異の網羅的なマッピングを行った。次に、タンパク質の立体構造上に疾患関連変異の有意な集合が見られるかどうかを判断し、有意な集合が見られた場合は、さらに詳細なクラスタリング解析を行い、3D変異クラスタの探索を行った。その結果、1504個の3D変異クラスタを同定することできた。疾患関連変異は、タンパク質構造上で機能部位近辺に集積する傾向がある一方、既知の機能部位に紐づかないクラスタは、未発見の機能部位を指し示す可能性がある。そこで、同定された3D変異クラスタに対し、既知の機能部位との関連性を解析したところ、約30%は、リガンド結合部位やタンパク質間相互作用部位の近辺に存在しない、未発見の機能部位候補となるものであった。 未発見の機能制御部位は、単純なポケットではなく、動的に生じるリガンド結合部位(クリプトサイト)やアロステリック制御部位の可能性が高い。これに対し、水に小さな化合物フラグメント(プローブ)を混ぜた共溶媒での分子動力学計算(共溶媒MD法)は、タンパク質の構造変化を誘発させたり、プローブのタンパク質表面への存在確率から機能部位を推定することができ、クリプトサイトやアロステリック制御部位の推定に有効である。そこで、共溶媒MD法を用いた効率的な機能部位推定を行うため、既知のクリプトサイトを持つタンパク質5個を対象に、プローブの組み合わせや計算時間など共溶媒MD法の実験条件の検討も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
効率的な機能部位推定を行うための共溶媒MD法の実験条件の確定までは至らなかったが、ヒトのタンパク質の既知構造に対し、網羅的な3D変異クラスタ探索を完了でき、未知の機能部位候補を列挙することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在進めている共溶媒MD法の実験条件を確定させ、未発見の機能部位候補に対する共溶媒MD法による機能解析を行う。また、高精度のタンパク質構造予測法であるAlphaFold2を用いることで、構造未知のタンパク質も解析対象に含むことができ、解析対象を拡大することが可能である。そこで、AlphaFold2のヒトのタンパク質予測構造に対しても3D変異クラスタの探索についても検討し、未発見の機能部位候補の拡充を行う。また、変異による構造の不安定化から、潜在的な局在化シグナルの露出により局在化変化を起こすタンパク質候補についての探索も進める。
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