2021 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of wood saccharification method using tertiary alcohol as lignin condensation inhibitor
Project/Area Number |
21H03643
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
野中 寛 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (90422881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊切 泉 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20618805)
秋山 拓也 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (50553723)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイオリファイナリー / バイオマス / リグニン / 木材 / 炭素膜 / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
脱炭素社会実現,林業再生等の観点から,地球上最大量の木材主成分,セルロース,ヘミセルロース,リグニンを素材やケミカルとして有効に使えるプロセス開発が急がれる。濃硫酸を用いた木材糖化法は,セルロースの完全加水分解が可能で単糖を高収率で回収できるが,リグニンは激しく縮合し燃料程度の用途しかない。そこで本研究では,酸触媒下カルボカチオンを生じやすい三級アルコール(tert-BuOH)を添加することにより,単糖収率は維持したまま,リグニンの縮合反応を抑制し,有機溶媒への溶解性,熱可塑性に優れるリグニンを高収率で回収する。本年度は,三級アルコールによるリグニン縮合抑制メカニズムを解明すべく,針葉樹リグニン芳香核のモデル化合物であるグアイアコール,メチルグアイアコールに対して,濃硫酸とtert-BuOHを反応させて,生成物の分析を行った。その結果,芳香環にtert-ブチル基が導入されたと推測される化合物が検出され,その生成の経時変化を追跡したところ,tert-ブチル化はごく初期に達成され,生成した誘導体の1つは分解し他の化合物に変換されることが見出された。三重大学にて標準的な条件で合成したtert-BuOHリグニンの分子構造解析のため,HSQC測定(1H,13C-二次元NMR)を行ったところリグニン側鎖領域に相関ピークが多数観測された。これらのピークの一つは,単離リグニンのフェニルクマラン型β-5構造と化学シフト値が一致したが,その他のピークは既存の構造と一致しなかったことから,リグニンの多くの部分がtert-BuOHとの反応により構造変化を受けていると推察された。同リグニンの高付加価値用途として,炭素膜を検討しており,リグニンのアセトン分散液をムライト支持体にディップコートし,窒素雰囲気下,低温焼成する手法を検討し,炭素膜には分子ふるい可能な細孔が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル化合物を用いて,確かに芳香環にtert-ブチル基が導入されることが確認されて,リグニンの分子間縮合を抑制しうる結果を得ることができ,また一方で,一度導入されたtert-ブチル基はさらなる変換をするという新規の知見を得ることができたため。新しいリグニンの二次元NMR分析には,種々の準備が必要であり,初年度におよそのあたりをつけることができたうえ,当リグニンの炭化についても,省予算で焼成可能なシステムを整えつつあり,次年度に向けて視界は良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル化合物による反応解析に関しては,現在のGC-MSによる分析系のほか,新たにHPLCによる分析系を構築し,tert-ブチル基導入部位が異なる化合物の分離,定性を目指す。またモノマーのみならず,リグニンモデルダイマーを活用した反応実験を開始する。リグニンのNMR分析に関しては,側鎖領域に観測されたピークはtert-ブチル化リグニンの構造解明に有用と考えられることから,今年度は側鎖のα位置換基に関する情報を得ることを目的に,tert-ブチル化リグニンのアセチル化物等の誘導体化物のHSQC測定を行い,非誘導体化物のスペクトルとの比較を行う予定である。炭化膜の製造に関しては,まずリグニンサンプルの調達が律速になりがちのため,三重大学にて10g単位でリグニンを単離し,山口大学へと供給する。山口大学では引き続き炭化焼成実験を続け,炭化条件の探索,炭化膜前駆体として適しているかの評価を行う。
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