2021 Fiscal Year Annual Research Report
堆積物コアDNAを用いた海跡湖の近過去魚類群集と環境変遷との関係解明
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21H03649
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
高原 輝彦 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (10536048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土居 秀幸 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 准教授 (80608505)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 堆積物コアDNA / 環境DNA / 環境DNAメタバーコーディング / 宍道湖 / 汽水湖 / 山陰 / 魚介類 / 水草 |
Outline of Annual Research Achievements |
海跡湖の湖底に堆積したコアには、自然災害や社会・経済的な影響による環境変遷の履歴が保存されている。この堆積物コアの情報を読み解くことで、過去の環境変遷にともなって海跡湖がどのような影響を受けてきたのかを明らかにできる。そこで本研究テーマでは、環境DNA分析(環境中のDNA断片から生物の生息情報を簡便に推定できる技術)を用いて、堆積物コアDNAから生産者や高次消費者、および、水産有用種を含む魚類群集の復元を行い、復元された環境DNA情報と環境変遷の関係を解明することを目的として進める。その際、異なる地域性をもつ山陰の5つの海跡湖をモデルケースにすることで、海跡湖の近過去魚類群集と環境変遷の関係の一般則と地域固有性の両側面を明らかにしたいと考えている。なお近年では、海底の堆積物DNAの解析によって、およそ300年前のカタクチイワシなどのマクロ生物のDNAが検出できることが報告されている。そこで今年度は、2020年、および、2021年に宍道湖で採取した堆積物サンプルを用いた環境DNA解析を実施した。まず、環境DNAメタバーコーディング解析を実施した結果、スズキやサッパ、コノシロなどの魚類DNAを検出することができた。さらに、種特異的な環境DNA分析の結果、二枚貝ヤマトシジミに加えて、水草のツツイトモやリュウノヒゲモなどの環境DNAを推定約50年前の堆積物中からも検出可能であることが示唆された。これらのことから、宍道湖の堆積物コアに含まれる環境DNAを解析することによって、近過去のマクロ水棲生物の生息状況を推定することが可能であり、加えて、種特異的分析による対象種の環境DNA濃度の変化から、過去の個体群変動を推定できる可能性も見出すことができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
宍道湖における堆積物コアDNAを用いた詳細な解析が必要になり、宍道湖のサンプル数が増加したため、それらのサンプル処理を優先したことによって、当初予定していたよりも研究計画がやや遅れている状況であると考えている。しかしながら、宍道湖の堆積物コアDNAの詳細な解析によって、次年度以降の研究計画に活用できる示唆に富む結果を得ることができたため、それらを活用することで、今後の研究計画に沿った効率的な研究の実施が可能になったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、宍道湖で採取済みのサンプル処理を進めるとともに、中海や神西湖などを対象に加えて、堆積物コアサンプルの収集を行う。採取されたサンプルは層ごとに切り分けて冷凍保管しておき、適宜、環境DNAメタバーコーディング、および、種特異的解析を実施する。さらに、各海跡湖の堆積物コアサンプルから得られた近過去の魚類群集などのデータと環境変遷に関する地域固有性と一般則について予備的な解析に取りかかりたいと考えている。
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Research Products
(16 results)