2021 Fiscal Year Annual Research Report
重元素ナノ粒子添加ピコ秒シンチレータによる放射光X線時間分解イメージング
Project/Area Number |
21H03743
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
岸本 俊二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, シニアフェロー (00195231)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 真伸 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (00222117)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ビスマス酸化物ナノ粒子 / 重元素含有プラスチックシンチレータ / 高エネルギーX線 / 時間分解能 / 高速特性 / Si-APDアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
A.ビスマス酸化物ナノ粒子を50wt%まで含む重元素酸化物ナノ粒子添加PLSを製作し、うち40wt%について、厚さ3mmの試料を使ってX線エネルギー:73.0keVにおいて25%の高い検出効率とともに、半値幅0.24nsの優れた時間分解能を確認した。蛍光体は従来用いてきたb-PBDを1mol%加えたものだった。4-dimethyl amino-stilbene誘導体やメトキシ基やシアノ基を置換した誘導体を使った蛍光体やBenzophenoneを0.5%含むb-PBD蛍光体を添加してハフニウムおよびビスマス酸化物ナノ粒子充填PLS(溶媒:スチレンまたはビニルトルエン)を作製し評価を行った。残念ながら発光量が大きく低下しサブナノ秒発光寿命や従来よりも良好な時間分解能をえることはできなかった。 B.128チャンネルSi-APDリニアアレイを製作、APDゲイン向上と熱雑音低減のためのペルチェ冷却・真空容器の製作を行った。またシンチレーション光をSi-APDピクセルに分離して収集させるための光反射壁加工(レーザー照射による)のテストを実施し、波長400nm付近の透過率を半減させるレーザー加工に成功した。 C.試作済みの帯域3GHz以上、高集積度(16ch/4mm角)・高S/N比のCMOS-ASICフロントエンド回路チップ(FGATI)の改良を行った。従来のチップと比べ約3倍の信号/雑音比が得られる設計のテストチップが入手できた。 D.4チャンネルの比例モードSi-APDアレイを受光素子とする超高速・高感度X線シンチレータ搭載X線シンチレーション検出器を製作した。しかしペルチェ素子による冷却が十分でなくAPD増幅率が目標に達しなかったことにより出力信号の波高/雑音比が十分でない結果だった。また高周波ノイズの混入を十分に抑制できず、さらなる改良が必要となっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ビスマス酸化物ナノ粒子を高濃度で含むプラスチックシンチレータの製作・評価には成功した。蛍光体は従来のb-PBDを使用した。新たなピコ秒発光の高速蛍光体の候補についてテストしてきたが、残念ながら発光量を維持できるものが見つからなかった。ただし、b-PBDは発光時定数が1ナノ秒程度であり、発光量と高速発光のバランスが良いことを改めて認識する結果が得られた。蛍光体について発光量と発光寿命に関する定量的な評価を報告することがまだできておらず、実験手法の改良と合わせて急ぎたい。 受光素子側の開発は、成功の鍵を握る信号/雑音比の大きな高速フロントエンドASICの改良設計が進んだ。ただ、検出器としての素子性能の評価までに至っておらず早急に評価を進めたい。チップに収めるチャンネル数の集積度を向上させる改良は必要なことがわかっており、新たな信号処理ボード製作に向けて急ぐ必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
A.2021年度に続き、サブナノ秒オーダー発光の蛍光体を合成し、これを添加して重元素酸化物ナノ粒子添加プラスチックシンチレータ(PLS)を製作して評価する。発光量が最大となる蛍光体選定やmol濃度などの最適なPLS組成の探索を行う。そのとき、発光寿命を記録するための時間分光装置を改良し定量的・系統的な評価を蓄積する。またこれらの結果を早い時期に論文として報告する。2021年度に先行的に試みたシンチレーション光のピクセル分離のためのレーザーによる反射壁加工(委託)を、リニアアレイ装着に適した形状で再度試みる。これにより高速シンチレータを搭載するSi-APDリニアアレイを受光素子とするシンチレーション検出器システムの製作準備を進める。2021年度に製作した比例モードSi-APDリニアアレイ検出器に搭載して加工条件を確立する。 B. 高集積度(16ch/4mm角)の実現に向けて、広帯域・高S/N比のCMOS-ASICフロントエンド回路チップ(FGATI)の改良を行う。2021年度に製作した4チャンネル比例モードSi-APDを受光素子とする超高速・高感度X線シンチレータ搭載X線シンチレーション検出器を使って性能を早期に確認し、Cに備える。 C. Bで改良したFGATIチップをフロントエンド回路として搭載しマルチチャンネル・スケーリング(MCS)ボードを新規に製作する。AのPLSを128chのSi-APDリニアアレイに装着してマイナス20℃まで冷却、MCS信号処理ボードを使うシステムにより高エネルギーX線入射によるシンチレーション光に対し十分なS/N比、時間分解能が得られるか、放射光X線ビームを使ってテストする。
|
Remarks |
KEK放射光実験施設を中心に行ったSi-APDおよびシンチレーション検出器システムの開発に関する資料を掲載している。
|
Research Products
(8 results)