2021 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀日本の医療・社会・記録-医療アーカイブズから立ち上がる近代的患者像の探求
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21H04343
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 晃仁 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80296730)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永島 剛 専修大学, 経済学部, 教授 (00407628)
廣川 和花 専修大学, 文学部, 教授 (10513096)
中村 江里 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (20773451)
光平 有希 国際日本文化研究センター, 総合情報発信室, 特任助教 (20778675)
高林 陽展 立教大学, 文学部, 准教授 (30531298)
松岡 弘之 岡山大学, 社会文化科学学域, 講師 (30877808)
橋本 明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40208442)
久保田 明子 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (40767589)
野上 玲子 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (60537942)
逢見 憲一 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (70415470)
後藤 基行 立命館大学, 先端総合学術研究科, 講師 (70722396)
福田 眞人 名古屋外国語大学, 世界教養学部, 教授 (90208968)
宝月 理恵 お茶の水女子大学, グローバルリーダーシップ研究所, 特任講師 (10571739)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 医学史 / 精神医療 / ハンセン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療アーカイブグループが推進する小峰研究所資料調査では、医療記録および組織資料の内容特定を進めている。医療記録の大部分を占める症例誌に関しては約8割程度の人名特定を達成した。組織資料の調査からは、会計帳簿や出金伝票が部分的に残存することが分かり、1ヶ月の経理状況の把握につながるなど、組織運営の実態把握に向けて大きく前進した。 感染症・公衆衛生グループでは、「疾病と歴史」について上海の4大学から招待を受けての講演、「パンデミック時の日本および西欧における検疫をめぐる政府対応および社会の反応の比較史」等についての考察、「大正から昭和初期に於ける乳児死亡と感染症」や「スペインかぜ流行とわが国の衛生行政」等について分析と検討を進めた。 ハンセン病グループでは、国立療養所菊池恵楓園所蔵「患者身分帳」に関する共同研究を同園倫理審査委員会の許可を得て実施してきた。分担して主に1920年代の「患者身分帳」の読解と分析を進めた。共通フォーマットに匿名化したデータを入力して情報を共有し、1907年法下でのハンセン病療養所の入所者に関して、共同して多角的な分析を加えた。 精神疾患グループでは沖縄県公文書館および沖縄県立図書館が所蔵する戦後沖縄の精神衛生行政・公衆衛生看護に関する資料、京都癲狂院、東京府巣鴨病院、京都帝国大学ならびに東北帝国大学精神病学教室で行われていた音楽療法実践に関する資料、下総精神医療センターが所蔵する戦時下の国府台陸軍病院に関する資料を収集した。また、医療アーカイブズの保存と利用に関する議論を行った。 国際拠点形成グループでは、国外出張が難しいため日本国内の施設における患者の情報を記録するメカニズムを調査した。王子脳病院の病床日誌や、九州帝国大学、東京帝国大学の記録の違い、日本の国内の言語上の異なりを調査し、日本語、ドイツ語、英語などが用いられるパターンを調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
医療アーカイブグループでは一次資料のクリーニング、保存処理と資料調査、分析を同時並行に進めている。手間と時間のかかる作業が多いため補助作業員を雇い、作業効率の向上を図った。 感染症・公衆衛生グループではコロナ禍の影響で出張を伴う新たな史料調査や資料収集を行なえないなどの影響があったが、すでに資料が揃っている研究においては、おおむね順調に分析と検討を進めることができた。 ハンセン病グループでは、コロナ禍で国立療養所菊池恵楓園が外部からの訪問に制限をもうけているため、現地での研究会開催やあらたな資料の収集ができていないという点では課題もある。しかし、すでに入手した資料の読解を進め、オンラインを活用して意見交換を円滑に行っている。 精神疾患グループでは、新型コロナウイルス感染症のため、一部のアーカイブ調査は滞っているが、全体としてはおおむね順調に進展している。 国際拠点形成グループでは、国外出張が困難な状況のなか、日本の19世紀から20世紀にかけての症例誌における外国語に影響を中心に考えてきた。その中でドイツ語と英語がどのように使われてアーカイブをなしたかということについて研究を発表し、活字化してきた。また、英文雑誌の特集号の編集や国際会議への参加などの活動を通して外国の研究者との交流も行い、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
医療アーカイブグループでは、小峰研究所収蔵の医療記録と組織記録の内容調査を引き続き推進する。今年度は残存症例誌の数的特定および人名特定を完了させ、患者名簿との照合を行う。一方で組織記録から組織運営の分析を進める。特に会計帳簿から、入院患者の費用面からの分析(滞在病棟、入院等級による院内での処遇差等)を進めることを目標とする。 感染症・公衆衛生グループでは、結核予防・医療に2020年以降のコロナウィルス関連の問題やコレラ、赤痢、腸チフスなど経口感染の病気の罹患率・死亡率データの分析、2歳~6歳ごろまでの幼児の死亡原因と感染症(主として疫痢とみている)との関係及び国勢調査以前のわが国の死亡水準推移の年齢・死因構造と医療・公衆衛生の役割等について分析と考察を行う。 ハンセン病グループでは、今後、資料収集が可能なタイミングをみきわめて国立療養所菊池恵楓園を訪問し、効率よく研究を進めるよう努める。平行して、複数の学会報告の機会を通じ中間結果を公表することで、本研究の意義を積極的に発信していく。 精神疾患グループでは、センシティブ情報を含む資料を扱うため、マスキング作業等に時間を要し、本科研費の研究期間内にすべての収集・整理・分析ができない可能性がある。しかしながらこれらの未刊行資料は、近代医学や公衆衛生の規範と、それに対峙した患者の主体性の双方を分析するのに最適な資料であるため、資料の開示・利用を進めるとともに、既に入手した資料については分析を進めていく。 国際拠点形成グループでは、コロナ禍の影響を考え、まずは外国の研究者たちとメールや英語の論文などを送って連絡を取りはじめることを考えている。19世紀末から20世紀初頭の時代に限定し、地域としてはドイツのいくつかの大学病院やイギリスやアメリカの病院を考えている。
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[Book] Traumatic Pasts in Asia2021
Author(s)
Mark S. Micale, Hans Pols, Harry Yi‐Jui Wu, Eri Nakamura, Ran Zwigenberg, Jennifer Yum Park, Narquis Barak, Vannessa Hearman, Caroline Bennett, Hua Wu, Dyah Pitaloka and Mohan J. Dutta, Seinenu M. Thein-Lemelson, Saiba Varma, Maki Kimura, Byron J. Good
Total Pages
406
Publisher
Berghahn Books
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