2022 Fiscal Year Annual Research Report
Protest on the Street, and Reconsider the Nation: from the view points of space, violence and resonance
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21H04387
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
酒井 啓子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 特任教授 (40401442)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 薫 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 講師 (10431967)
後藤 絵美 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (10633050)
松永 泰行 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20328678)
小川 玲子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (30432884)
岡崎 弘樹 亜細亜大学, 国際関係学部, 講師 (30860522)
鈴木 啓之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任准教授 (50792488)
末近 浩太 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70434701)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Keywords | 社会運動 / ネイション意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、世界で同時多発的に発生する路上抗議運動を取り上げ、特に路上抗議運動が構築する共同体の自助性、自立性の強さとそのトランスナショナルなネットワークに着目し、若年層が追求する新たな「国家」のありかたを分析している。R4年度も新型コロナウィルス感染症の影響が残存し、海外渡航を実施しての現地調査や、海外からカウンターパートを招聘しての共同研究が十分には実施できなかった。一方で、日本国内での移民難民コミュニティにおけるネイション意識の生成過程に注目した研究を進め、千葉県四街道市における在日アフガニスタンコミュニティの調査を行うなど、海外での調査を補足する研究を実施した。 繰り越しを行ったR5年度には渡航制限が緩和されたため、各分担者は積極的に現地調査を行うとともに、海外での国際学会での研究成果報告を行った。特に6月にはモロッコで開催された国際研究学会(ISA)でパネルを設定、分担者の岡崎の他、若手中東研究者を研究協力者に加えて路上抗議運動とナショナリズムについての報告を行った。また酒井・松永は、同6月ベルファストでの国際政治学学会(IPSA)宗教分科会会議に、末近は7月のアルゼンチンでの同学会大会に出席、研究発表を行った。末近は11月には北米中東学会(MESA)での報告も実施した。 海外からの研究者招へいも本格化し、10月には豪、英、独、キルギスタンからIR・地域研究専門家を招聘、地域の社会運動やナショナルな動静を国際政治の枠組みでどう分析するか、地域とIRの接点を模索するワークショップを東大で開催した。 パレスチナ・イスラエルにおける抗議運動の調査については、R5年4月に東エルサレムを巡る緊張の高まりを反映して国内で緊急ウェビナーを、10月には石油危機から半世紀のワークショップを実施したほか、ガザ戦争勃発後は鈴木、山本ら分担者がワークショップを開催、広く知見の社会発信に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R4年度はまだコロナ感染症の影響もあり、十分な海外研究者との交流や現地調査が実施できなかったが、その間もオンラインで意見交換を続けてきた結果、繰り越し後のR5年度には、その間蓄積した研究成果を国際学会で発表することができた。特にモロッコでのISA大会では、酒井、岡崎、Mostafa Khalili(千葉大・特任研究員として雇用)が中東諸地域の抗議運動に関して報告を行い、同学会参加の現地研究者および欧米の第一線の国際政治学者から有意義なコメントを受けることができた。国際的に高い質の研究を示すことができたといえる。 その他の国際研究発信としては、ISAやIPSAでの報告に加え、ドイツの地域研究機関GIGAが主導する「イラク戦争20年」を期したオンライン・セミナー・シリーズに酒井が報告、その後ドイツの著名な中東研究誌に掲載されたことも、大きな成果といえる。 他方、R5年10月7日に勃発したガザからのイスラエル越境攻撃とそれに対するイスラエルの報復攻撃の激化、長期化は、パレスチナを研究対象として調査を予定していた計画を大きく狂わせた。パレスチナでの調査が不可能になったばかりでなく、戦争の拡大が強く懸念されたレバノンでも退避勧告が出され、予定した調査、現地研究者との共同研究を見送らざるを得なくなった。さらには紛争がイラン、イラク、ヨルダン、シリアにも拡大する傾向を見せ、それら地域への渡航も控えざるを得ない状況が生まれている。加えて、ウクライナ戦争の長期化などの影響から欧米諸国への渡航費が高騰するとともに、円安によって海外調査での支出に大きな負担が生じている。 とはいえ、こうした制約のなかで、特にパレスチナ情勢については積極的な情報収集と社会発信を続け、国内外で研究成果発表を行った。特に、11月に実施した緊急ワークショップの成果は、R6年にSpringerから英文報告書を出版予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症による行動制限が解除されたことで、R5年度から本研究課題に関わる本格的な現地調査や成果の国際発信が実施可能となったが、その一方で、R5年度後半はガザ情勢の緊迫化、紛争の拡大によって、研究期間内に予定していたパレスチナ、レバノン、イランでの現地調査を実施することができなかった。そのため、最終年度であるR5年度の事業もまた、R6年度に繰り越し、紛争の終結あるいは危険の低減とともに、予定の現地調査を実施する予定である。ただ、短期と予想された戦争は終結のめどがついておらず、特にパレスチナ、レバノンに関してはいつ渡航が可能になるか、全く不透明である。 その場合は、代替として、隣国のヨルダンやエジプトへの調査を行い、関連する難民コミュニティや現地研究者に対する聞き取り調査を行うことで、研究目的に沿う調査成果を上げられるように、努力する。また湾岸地域への紛争の波及は、今後は最大限抑制されそうであるので、イラン、イラクへの調査は慎重を期しつつ実施する。 またR4年度事業として遂行してきた社会運動に焦点を当てて地域研究とIRを接合する理論的模索については、R5年度の東大でのワークショップの成果としてR6年6月にクロアチアで実施される国際研究学会にて2パネルを主催し、それを踏まえて国際的学術誌での特集号かケンブリッジ大学出版会からの書籍出版を計画中である。 また、ガザ戦争でとん挫した現地での調査にかえて、現地出身研究者との研究交流は密に実施しており、その成果としてR6年9月にSpringer社から、Nakba 1948 to 2023 - War on Gaza and its Social Backgroundを出版予定である。 加えて、ガザ戦争に呼応した反戦路上運動が活発化しているため、それについても情報収集、意見交換を国内外で行う。
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Research Products
(36 results)