2022 Fiscal Year Annual Research Report
音の身体性が心理情報処理に及ぼす影響の基盤解明とその応用
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21H04427
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北川 智利 立命館大学, BKC社系研究機構, 教授 (60336500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 有史 立命館大学, 食マネジメント学部, 教授 (30366546)
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (60332524)
西浦 敬信 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (70343275)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 聴覚 / 身体性 / 注意 / 感情 / 社会的応用 |
Outline of Annual Research Achievements |
聴覚の身体性が音声の記憶や選好に対して与える影響を検討するために約50名分の音声データベースを作成した。それらの音声の魅力度をオンライン実験を通して測定した。また、それらの音声がヒトにさまざまな距離から提示された時に、音響的にどのように変化するかを高周波頭部シミュレータを使って測定・分析した。それらの結果から、実験に使用する音声を追加する作業を継続して行っている。音声データベースが完成した後には、それらの音声を用いて、声に対する選好や記憶が、身体からの距離に応じて変化するかどうかなどを検討する予定である。 また聴覚的な注意に関しては、頭部からの距離に応じて聴覚的な注意の特性が変化するかどうかを内発的注意に関して検討した。これまで奥行き方向での聴覚空間的注意に関する研究はほとんど行われてこなかったが、奥行き方向の任意の地点に対する内発的注意が有効なことが示された。一方で頭部からの距離に応じた注意特性の違いは見出せなかった。別の注意課題や外発的注意について検討を進めている。 また、聴覚が触覚に与える影響について検討するために、まず触覚における確率共鳴現象が、道具越しに生じるかどうかを検討した。確率共鳴現象は、閾値未満の入力に特定の強度のノイズを付与することで、応答が改善される現象である。実験では、この現象が手に持ったハシを通しても生じることを示唆する結果が得られた。 社会的な応用に関しては、特殊詐欺場面において耳元で聴く声が、騙されやすさに影響する可能性について自治体による講演会などを通して広く発信した。また、超音波スピーカを用いて、身体のすぐそばに音が定位する音の提示装置を作成し、社会的な課題への適用を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験に使用する音声の収録や音響解析、奥行き方向での聴覚的注意、触覚における確率共鳴などに関する研究を順調に進めることができた。成果の発表に伴って、新たに興味を持った研究者の参加もあり、研究プロジェクトは順調に発展している。一方で想定していなかった結果から、新たな音響分析装置が必要になり、その購入に時間を要したこともあった。ただ、その間にも、装置を必要としない実験は進めることができた。 成果の社会的応用についても、引き続き講演などを通して一般の方々への発信を行っている。また、社会的な課題への現実場面での応用を目指して、超音波スピーカを用いて、離れた場所から身体のすぐ近くに音を提示する装置を試作している。並行して適用すべき社会的課題の選定を行っているところである。 これらのことから概ね期待通りの成果を得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験に使用するための音声データベースを完成させる。これには音声の収録、音声の音響分析、音声の感性的評価が含まれる。完成した音声データベースを利用して、音声に対する選好や音声の記憶に関して、音の身体性がどのような影響を与えるかを明らかにしていく。 聴覚的注意に関しては、奥行き方向における内発的注意だけでなく外発的注意についても検討を行っていく。また、距離によって空間的な注意の特性に違いがあるかどうかについても引き続き検討を行う。 これまで検討できていなかった身体運動と音の関係についても検討を始める予定である。どのような身体運動に対してどのような音が対応しやすいのか、音によって促進される身体運動があるのかどうかについて検討を進める。 社会的な応用については、超音波スピーカを用いた装置を完成させ、音の身体性の知見が応用できる具体的な社会的課題を選定していく。
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