2021 Fiscal Year Annual Research Report
自然法則に基づく安定性河道とデータ駆動型の河道の予知保全法による河川の多重性向上
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21H04596
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
安田 浩保 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 研究教授 (00399354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村松 正吾 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30295472)
早坂 圭司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40377966)
大竹 雄 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90598822)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 交互砂州 / 自然法則 / 予知保全 / 観測ビッグデータ / カオス / 自己組織化現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
扇状地前後に位置する河川では、底面に交互砂州と呼ばれる起伏形状が自発的かつ例外なく形成される。交互砂州が発達した河川における平水時の澪筋は、導波管現象のように両岸の間を対角線状に反射する形状となる。本研究では、まず、交互砂州が発達する河川における普遍的な幾何学的形状の探索を行い、その中で自発的に形成される澪筋が形状安定性に優れることに着目し、その形状を定量化した。次に、実河川で見られた自発的澪筋の川幅を初期に与える模型実験と実河川のそれぞれでを行い、その形状安定性は非常に優れることを実証した。また、初期の底面を平坦とし、そこから交互砂州が徐々に形成される過程について高い空間分解能かつ高頻度に測定した。これは、交互砂州の形成の端緒の測定の初めての成功と言え、今後、交互砂州の形成の機構解明とそれに基づく制御への応用が期待できる。ただし、2021年度の研究において、移動床水理の時間発展のアンサンブル計算を行ったところ、移動床水理にはカオス性を内在する結果が得られた。
本研究では、本研究グループが独自に開発したStream Tomography: STという模型実験における移動床水理の高い空間分解能かつ高頻度な測定法の拡張を行った。具体的には、STにより高い分解能かつ高頻度に取得される水面と底面の観測ビッグデータの数理的な処理により、流れの支配方程式を用いず、これらの測定値と同等の空間分解能で流速の推定を可能とした。上記の通り、移動床水理はカオス性を内在する結果が得られ、モデル駆動型解析による長期予測は得策ではないことが示唆された。拡張されたSTにより得られる観測ビッグデータのデータ駆動型解析によりモデル駆動型解析の代替えや補強が可能となる結果も得つつある。具体的には、STの観測ビッグデータを特異値分解することで、河川の物理的な状態を把握できる可能性があることがわかってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、申請段階の想定を上回る後述の成果を得られた:1) 自発的に形成された澪筋は非常に形状安定性に優れることを実証した。2) 移動床水理はカオス性を内在する結果が得られ、モデル駆動型解析による長期予測は得策ではないことが示唆された。3) この問題への対処として、拡張されたSTにより得られる観測ビッグデータのデータ駆動型解析によりモデル駆動型解析の代替えや補強が可能となる結果も得つつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降についても実河川における形状安定性に優れる幾何学的形状の探索を続ける。また、移動床水理の模型実験と実河川のそれぞれの観測ビッグデータの測定法の開発や拡張を続ける。これらの測定法により、交互砂州などの自己組織化現象の機構解明に努め、洪水時の安定性に優れる河道の設計法の概念を構築する。また、移動床水理にはカオス性が内在されていることを示唆する結果が得られ、モデル駆動型解析だけによる長期予測は困難であることがわかってきた。前述の観測ビッグデータのデータ駆動型解析も実施し、危険予知や予知保全のためのデータ駆動型解析の手法をさらに発展させる。
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