2022 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative study on social system and policy towards regeneration of agri-food system from local perspectives in post-Corona era
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21H04745
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
秋津 元輝 京都大学, 農学研究科, 教授 (00202531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久野 秀二 京都大学, 経済学研究科, 教授 (10271628)
Steven McGreevy 総合地球環境学研究所, 研究部, 客員准教授 (10700172)
田村 典江 事業構想大学院大学, 事業構想研究科, 講師 (20642705)
大石 尚子 龍谷大学, 政策学部, 教授 (20725361)
高村 竜平 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (30425128)
大野 智彦 金沢大学, 法学系, 教授 (30531884)
芦田 裕介 神奈川大学, 人間科学部, 准教授 (30771951)
立川 雅司 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40356324)
辻村 英之 京都大学, 農学研究科, 教授 (50303251)
原山 浩介 日本大学, 法学部, 教授 (50413894)
友澤 悠季 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (50723681)
中村 麻理 名古屋文理大学, 健康生活学部, 教授 (60434635)
西山 未真 宇都宮大学, 農学部, 教授 (70323392)
中田 英樹 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (70551935)
坂梨 健太 京都大学, 農学研究科, 准教授 (90749128)
岩橋 涼 名古屋文理大学, 健康生活学部, 助教 (90721077)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | ローカル・フードポリシー / 参加型アクションリサーチ / 食農システム再編 / 有機農業 / 欧州都市食農システム / 社会的イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は未だ新型コロナの影響が残っていたが、繰り越した2023年度は自由な移動に基づく研究活動がしだいに正常に戻ってきた。新型コロナ後の食農システムの変化は、フードデリバリーサービスの社会への浸透など感染拡大の経験によるものもあるが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻にともなう穀物や農業資材価格の上昇および急激な円安による食料品価格の高騰、および同じく2021年に農水省より発表された「みどりの食料システム戦略」における有機農業推進政策による影響が大きい。とりわけ本研究の課題である持続可能な食農システムへの転換において、環境の持続可能性に配慮した有機農業の推進は重要案件となる。 有機農業の推進にあたって農水省が募集した「オーガニックビレッジ」に応募するかたちで、調査サイトのひとつである亀岡市では、私たち研究グループの働きかけも作用して、先駆的に体制が整いつつある。それに関する私たちの関わりと進展過程については、参加型アクションリサーチという研究枠組みを利用して、研究成果を公表した。亀岡市のほか、研究グループに関連して安城市や近江八幡市、藤枝市でもオーガニックビレッジとしての進展が見られており、今後は比較研究も視野に入ってきた。持続可能な食農システム構築に向けた理論的な考察、およびヨーロッパ諸国における先進事例紹介も雑誌連載のかたちで公表を続けており、しだいに新型コロナによる研究停滞を取り戻しつつある。 食農システム再編を地域レベルでの草の根から創造していくことが本研究の特徴である。その場合に、従来の体制を見直す動きが必要になるが、それを社会的イノベーションという概念によって把握しようという、実践的かつ理論的な研究も実を結びつつあり、研究成果も徐々に公表されつつある。また、アウトリーチとして、雑誌特集において一般向けに研究成果を公開し、実装に繋げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染による研究の遅れを取り戻しつつある。本研究は食農システム再編をめざす動きを実態として把握するとともに、研究者自らも参加するかたちでその実現に向けて対象社会と協働することを主眼としている。社会実装を目的とするには、対象とする社会事象が常に流動的であることから、具体的レベルにおいて研究計画当初に想定した関わり方を常に修正しながら、研究を進める必要がある。私たちの研究において、2021年に発表された「みどりの食料システム戦略」に政策方向として示された有機農業推進は、その後の「オーガニックビレッジ」の拡大と相まって、私たちの実践的な研究課題に大きくプラスの影響を与えている。とくに亀岡市における先駆的な動きこの研究グループの影響によるところもあり、実装事例として自負している。 食農システム再編に関する海外の事例紹介とそれを基礎としたアジア型食農システム再編への模索についても、理論的なアプローチも含めて研究が進んでいる。欧米と比較した最大の課題が、食農システムの再編を考える社会的動機として、環境的持続可能性への関心が低く、自身の健康や身近な人間関係の維持などへの関心が高いことなども研究グループとして認識を共有している。その結果、制度的な支援を含めた消費レベルからの食農再編が喫緊の課題であることを確認できた。 食農システム再編を地域レベルで埋め込んでおくときの理論的な視点として、社会的イノベーションという概念をえたことも重要な成果である。この概念自体は日本でも地域づくり研究において検討されてきたが、欧米では食農システム再編に関連した研究が豊富である。バスワードとも呼ばれるこの概念を食農システム再編に向けて彫たくしていくことが、今後の課題としてみえてきたのは大きな一歩と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
有機農業の推進とそれによる食農システム再編の動きは始まったばかりであり、研究および実践としてさらに深める必要がある。有機農業を拡大させるためには、消費レベルでの関心の拡張が不可欠となるが、その場合に環境の持続可能性からの動機を消費行動に埋め込むべく、研究グループが関わっている亀岡市、近江八幡市、藤枝市、安城市、益子町などにおいて、社会実装活動として研究を進める。さらに有機農業の社会実装を目標として、高等教育での有機農業カリキュラムの開発についても、準備的に研究を開始する。 有機農業にこだわることなく、地域の環境的条件と食農システム再編との関連についての地域社会的研究を進める。この研究班は相対的に研究進行が遅れているため、全体ミーティングなどで助言や議論を活発化して、地域社会における食農の占める位相について研究を進める。その際に、社会的イノベーション概念を広く使用できるかどうかについても検討をおこなう。 それらの成果について、新型コロナおよび中国の開催大学の都合により延期となっていたアジア農村社会学会(2024年9月に京都市龍谷大学で開催)などの国際学会や、2024年10月にこの研究グループがひとつの成果報告として関わる台日食文化国際会議(2024年10月に京都大学で開催)などで報告し、アジア地域での問題を共有し、食農システム再編の方向について研究を進化させる。
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Research Products
(25 results)
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[Book] 英明企画編集2023
Author(s)
松下秀介・辻村英之・森真里(編著)
Total Pages
211
Publisher
食料と農業の「なぜ?」―あなたの疑問に答えます
ISBN
978-4-909151-58-2
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