2022 Fiscal Year Annual Research Report
初期分泌経路における亜鉛恒常性維持とタンパク質恒常性維持の相関と分子構造基盤
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21H04758
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
稲葉 謙次 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (10423039)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Keywords | 亜鉛 / クライオ電顕 / 細胞イメージング / タンパク質品質管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、ゴルジ体に存在する亜鉛輸送体ZnT4/5/6/7を介した亜鉛恒常性維持機構と、亜鉛依存性分子シャペロンERp44を介したタンパク質恒常性維持機構に関する詰めの研究を行い、論文がNature Communications誌に受理されるに至った。一方これまで、小胞体からサイトゾルに亜鉛を排出する膜輸送体ZIP7の生理機能については十分に理解されていなかったため、ZIP7ノックダウンおよび阻害剤処理の実験を系統的に行った。その結果、ZIP7阻害処理に伴う小胞体内の亜鉛濃度の上昇を観測し、さらにそのことに起因して、ERp44の細胞内局在、トラフィック、およびクライアント滞留活性の変化を観測した。最終的に、小胞体の亜鉛恒常性維持とレドックス恒常性維持が密接に関わっていることを突き止め、現在論文作成に取りかかるところである。 ゴルジ体に存在する亜鉛輸送体ZnT7のクライオ電顕による構造解析も大きく進展し、亜鉛結合状態および非結合状態の両方について、原子分解能に近いレベルで構造を決定することに成功した。興味深いことに、この構造解析により、ZnT7に特徴的な長いヒスチジンループがサイトゾル側で亜鉛イオンをリクルートする様子を捉えることに成功し、ZnT7による亜鉛輸送機構に関する重要な情報が得られ、現在リバイス原稿投稿準備中である。また小胞体の亜鉛輸送体ZIP7についても、大量発現精製系を構築し、それに特異的に結合するナノボディの作製にも成功した。クライオ電顕によるZIP7の構造解析の下地はおよそ出来たと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度中に、ZnT4/5/6/7による亜鉛恒常性維持に関する論文がNature Communications誌に受理されたことは、当初の予定通りである。一方、小胞体の亜鉛輸送体ZIP7に関する一連の研究から、小胞体における亜鉛とレドックス間のクロストークに関する発見は当初想定していなかったことであり、細胞生物学分野に大きなインパクトを与える成果であると考えている。また亜鉛輸送体ZnT7のクライオ電顕構造解析についても、この一年間で飛躍的に分解能が向上し、その結果、ZnT7に特徴的なHis-loopの亜鉛リクルートにおける新たな機能的役割が見つかったのも想定外の興味深い発見である。
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Strategy for Future Research Activity |
小胞体の亜鉛輸送体ZIP7の阻害およびノックダウン時の種々の表現型とメカニズムに関する詰めの実験を行い、完成度の高い論文を一日も早く投稿する。さらにZnT7のクライオ電顕構造解析に関する論文について、追加実験およびリバイス原稿作成がおよそ完了し、今年度早い段階で論文アクセプトまでこぎ着ける。また、ZIP7のクライオ電顕構造解析についても、すでにナノボディの作製は完了しており、ZIP7-ナノボディ複合体を調製し、その構造解析を達成する。
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Research Products
(22 results)