2021 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫制御によるがん細胞の生存・維持の分子基盤の解明
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21H04807
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
的崎 尚 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (80252782)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Keywords | がん微小環境 / 腫瘍免疫 / マクロファージ / 樹状細胞 / SIRPα |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞によるCD47-SIRPα系やその関連分子を介した自然免疫系ならびに免疫システム全体の制御機序の解明を目指し、今年度は以下の研究成果を得た。(1)CD47-SIRPα系による腫瘍免疫制御における樹状細胞ならびにNK細胞の役割の解明: CD47-SIRPα系を介した獲得免疫応答への誘導能の解明を行う目的でT細胞特異的CD47欠損マウスを樹立し、CD47はT細胞の恒常性の維持に重要な役割を担うことを見出した。(2)CD47-SIRPα系によるがん細胞の貪食制御の分子機序の解明: 好中球のがん細胞に対するTrogocytosisとそのCD47-SIRPα系による抑制作用機序の解明に向け、がん細胞と好中球と共培養の条件検討を進めた。(3)免疫細胞ヒト化マウスを用いたCD47-SIRPα系による腫瘍免疫制御の検討: 免疫細胞ヒト化マウスを用いたヒト腫瘍モデルにおいてヒトSIRPα抗体による抗腫瘍効果に加え、腫瘍内マクロファージによる腫瘍細胞の取り込みの亢進や活性化を見出した。(4)抗SIRPα/β抗体による新規の腫瘍抑制作用とその分子機序の解明: 抗SIRPα/β抗体がTNFα依存的に特定のがん細胞に対するマクロファージの貪食を増強すること、また、それらがん細胞に対する好中球による殺細胞効果を増強することを見出した。また、抗SIRPα/β抗体が単独で抗腫瘍効果を発揮することに加え、この抗腫瘍作用には、SIRPβと抗体の結合が重要であることを見出した。(5)がん細胞の生存・維持に関わるCD47の新たな機能解明とその治療的応用:CD47欠損ががん細胞の形質を変化させている可能性を探るため、CD47欠損がん細胞を複数樹立し、CD47が発現を制御する膜タンパク質について同定を進めた。一方、in vitroでがん細胞上のCD47発現をコントロールする方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた実験機材(ユニバーサル遠心機)の入手が不可能となり(製造側の部品調達が遅れたため)、一部の研究項目につきその進行が遅れてしまったが、その他の研究に関しては十分な成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上記の研究を継続し推進するとともに、特に樹状細胞によるT細胞を介した抗腫瘍免疫の誘導におけるCD47-SIRPα系の役割を明らかにする。また、抗SIRPα/β抗体による新規の腫瘍抑制作用とその分子機序の解明についてはSIRPβ特異的な抗体を取得し、SIRPβを介した腫瘍免疫応答の役割やその作用機序について詳細な解析を行う。さらにヒトSIRPαに対する薬剤による抗腫瘍免疫制御の解析においては患者由来腫瘍を用いた免疫ヒト化マウスを用いた解析を進める。
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Research Products
(14 results)