2021 Fiscal Year Annual Research Report
肝微小環境の構造理解に基づく新たな代謝性肝疾患治療の確立
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21H04823
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
本多 政夫 金沢大学, 保健学系, 教授 (00272980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀本 勝久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 招聘研究員 (40238803)
土居 信英 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (50327673)
岡田 光 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任助教 (50788916)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 肝微小環境 / 類洞内皮細胞 / Sema6A / 肝再生 / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
NASHは脂肪化・炎症・線維化を伴って進行し、肝不全や肝発癌発生の要因となる。本申請では、Sema6Aの肝類洞内皮における本来の生理機能を解き明かすことにより、肝再生機構、肝類洞の細動脈化機構、線維化、炎症の機転を解明することを目的とする。また、Sema6Aの発現低下と自律神経系路の分布異常との関連を明らかにし、自律神経制御異常によって引き起こされる肝の代謝障害の機序を解明する。 本年度はCDH5-cre/Sema6Afl/fl/Rosa26-tdTomatoを用いて四塩化炭素肝線維化モデルにおけるSema6A-KO細胞のfateをlinage traceにて検討した。類洞内皮Sema6A-KO細胞はαSMA陽性肝星細胞との接着を消失し、コントロールマウスと比較して約30%の低下が見られた。また一部でコラーゲンを産生する細胞も認められEndoMT(内皮間葉移行)の存在が示唆された。Sema6A-PlxinA2シグナルの詳細を検討し、PlxinA2の細胞内ドメインと結合するRND3のシグナル伝達に必須の燐酸化部位を同定した。Sema6A-PlxinA2シグナルを制御する化合物のスクリーニングのため、独自開発の「パスウェイ変動探索システム」を用いて、米国Broad Instituteの1309種の化合物変動データ、FDA承認薬107種の化合物変動データの超幾何分布に基づくパスウェイ解析を実行し、33の候補化合物を得た。肝細胞選択的なSema6Aのdeliveryを目的に送達効率の高い来膜透過促進ペプチドS39を新たに見出した。さらに、様々な抗原に結合するVHドメイン抗体を創出できる系を確立し、PlxnA2に対するVHドメイン抗体の作成のため、ビーズ固定用のタグを融合したPlxnA2細胞外ドメイン発現用プラスミドを作成し、HEK293細胞で発現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
類洞内皮細胞特異的Sema6A-KOマウスは、四塩化炭素(CCL4)、胆管結紮(BDL)、超高脂肪コリン欠乏メチオニン減量飼料(CDAHFD)、メチオニンコリン欠乏飼料(MCD)の4種類の線維化モデルでコントロールマウスと比較して肝線維化形成の顕著な増悪が認められる。本年度はCDH5-cre/Sema6Afl/fl/Rosa26-tdTomatoを用いて四塩化炭素肝線維化モデルにおけるSema6A-KO細胞のfateをlinage traceにて検討し、Sema6aがKOされた類洞内皮細胞とαSMA陽性肝星細胞の隣接率がコントロールマウスと比較して約30%低下を認めた。また一部の細胞で、EndoMT(内皮間葉移行)の存在が確認された。 Sema6A-PlxinA2シグナルを制御する化合物のスクリーニングのため独自開発の「パスウェイ変動探索システム」に入力した。パスウェイ変動探索システムは、米国Broad Instituteが作成した1309種の化合物変動データ、及び独自に構築したFDA承認薬107種の化合物変動データについて、超幾何分布に基づくパスウェイ解析を実行し、33化合物が得られた。 当初の計画で予定していた既存の一本鎖抗体がマウスではなくヒトASGRに結合する抗体であったことと、VHとVLを人工的なリンカーで連結した一本鎖抗体よりもVHのみからなる単一ドメイン抗体のほうが免疫原性のリスクも少なく大量発現も容易であることから、ヒトASGRとマウスASGR(類似性80%)の両方に結合するVHドメイン抗体をmRNAディスプレイ法により新たに創出することにした。Sema6Aとの融合タンパク質の調製は未施行であるが、PlxnA2をターゲットとしたVHドメイン抗体の作成のための準備を終えることができたので、計画全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
類洞内皮特異的Sema6A-KOマウスの部分肝切除モデルを用いてSema6Aの肝再生における役割を明らかにする。CDH5-cre/Sema6Afl/fl/Rosa26-tdTomatoマウスを用いて、肝線維化形成に伴う類洞内皮細胞の小孔の損失を電子顕微鏡で観察し、類洞内皮細胞自体の遺伝子発現変動解析を行う。肝微小循環実験モデルを用いて、門脈内にSema6A蛋白を注入することで、脳内の自律神経の変動が認められることを確認した。Sema6Aの自律神経系に於ける役割を、更に検討していく。 33化合物について、適応疾患、薬効機序、標的分子などをFDA、PMDA、DrugBankから組織的に収納したデータセットに基づいて化合物の特性を整理している。今後、リン酸化解析を実行し、Sema6A-PlxnA2とSema3C-PlxnA2の下流シグナルの相異を検出し、33化合物から更なる絞り込みを行う。 ヒトVHドメイン抗体ライブラリーと抗原(Bait)となるビオチン様タグ付きヒトPlxnA2、マウスASGRおよびヒトASGRを用いて、それらに結合するVHドメイン抗体をmRNAディスプレイ法により創出する。得られたヒトASGRとマウスASGRの両方に結合するVHドメイン抗体とSema6Aとの融合タンパク質を調製し、肝細胞由来培養細胞や初代肝細胞の表面に選択的にdeliveryされることを確認する。
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Research Products
(29 results)
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[Journal Article] Dysbiotic gut microbiota in pancreatic cancer patients form correlation networks with the oral microbiota and prognostic factors.2021
Author(s)
Matsukawa H, Iida N, Kitamura K, Terashima T, Seishima J, Makino I, Kannon T, Hosomichi K, Yamashita T, Sakai Y, Honda M, Yamashita T, Mizukoshi E, Kaneko S.
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Journal Title
Am J Cancer Res.
Volume: 11
Pages: 3163~3175
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Clinical trial of autologous adipose tissue-derived regenerative (stem) cells therapy for exploration of its safety and efficacy2021
Author(s)
Sakai Y, Fukunishi S, Takamura M, Kawaguchi K, Inoue O, Usui S, Takashima S, Seki A, Asai A, Tsuchimoto Y, Nasti A, Bich Ho TT, Imai Y, Yoshimura K, Murayama T, Yamashita T, Arai K, Yamashita T, Mizukoshi E, Honda M, Wada T, Harada K, Higuchi K, Kaneko S.
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Journal Title
Regenerative Therapy
Volume: 18
Pages: 97~101
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] BMP9‐ID1 signaling promotes EpCAM‐positive cancer stem cell properties in hepatocellular carcinoma2021
Author(s)
Chen H, Nio K, Yamashita T, Okada H, Li R, Suda T, Li Y, Doan PTB, Seki A, Nakagawa H, Toyama T, Terashima T, Iida N, Shimakami T, Takatori H, Kawaguchi K, Sakai Y, Yamashita T, Mizukoshi E, Honda M, Kaneko S.
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Journal Title
Molecular Oncology
Volume: 15
Pages: 2203~2218
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Serum Laminin γ2 Monomer as a Diagnostic and Predictive Biomarker for Hepatocellular Carcinoma2021
Author(s)
Yamashita T, Koshikawa N, Shimakami T, Terashima T, Nakagawa M, Nio K, Horii R, Iida N, Kawaguchi K, Arai K, Sakai Y, Yamashita T, Mizukoshi E, Honda M, Kitao A, Kobayashi S, Takahara S, Imai Y, Yoshimura K, Murayama T, Nakamoto Y, Yoshida E, Yoshimura T, Seiki M, Kaneko S.
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Journal Title
Hepatology
Volume: 74
Pages: 760~775
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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