2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト胎盤形成のエピゲノム制御と母体-胎盤間分子シグナルコミュニケーションの理解
Project/Area Number |
21H04834
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有馬 隆博 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80253532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 記緒 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10803885)
柴田 峻 東北大学, 医学系研究科, 助教 (40885670)
小林 枝里 東北大学, 医学系研究科, 助教 (70634971)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | ヒト胎盤 / 胎盤幹細胞 / 妊娠高血圧症候群 / オルガノイド / 母体ー胎児間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の晩婚化と高齢出産の増加により、胎盤のエピゲノムに異常を示す流産や妊娠高血圧症候群(HDP)の発症頻度が、年々増加傾向を示している。本研究では、ユニークなエピゲノム特性を示すヒト胎盤において、いかなる分子機構を介して、エピジェネティックな制御が行われているのか明らかにすることを目的としている。具体的には、胚発生モデルとHDP疾患胎盤のエピゲノムについて解析し、母体と胎盤間のシグナル伝達経路について理解することを目指している。そのため、1)ヒト胚盤胞様構造物と母体細胞(子宮内膜細胞)を用いて、母体内の胎盤形成と分化を高度に模倣する三次元オルガノイドモデルを作製し、母体-胎盤間の分子ネットワークを包括的に理解 2)エピゲノム異常を示すHDPの病態を再現するモデルを作製し、エピゲノム制御の理解を行う。まず初年度は、ヒト胚盤胞様構造物と子宮内膜細胞の共培養による三次元ヒト胚発生オルガノイドモデルの作製とHDP胎盤由来TS細胞株の樹立することおよび微量サンプルに適応した多階層オミックス解析について、研究を開始した。胚発生オルガノイドモデルの作製では、子宮内膜の肥厚やTS細胞の浸潤・分化能の変化を経時的に観察することに成功した。また、妊娠中期の栄養膜細胞を用いたTS細胞の樹立では、SALL4が必要であることを突き止めた。しかし、SALL4を導入したTS細胞では、11番染色体長腕部分に高頻度にインプリント遺伝子領域のヘテロ接合性の消失(LOH)を認めた。そのため、この領域の遺伝子発現を制御するKIP2の発現を調節するため、Sh KIP2を遺伝子導入した。現在、作製した疾患TS細胞がLOHを回避し、疾患特異的なエピゲノムの特徴を保持しているかどうか検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ヒト胚発生オルガノイドモデルの作製:手術摘出後のヒト子宮内膜組織を細切・酵素処理により、子宮内膜上皮および間質細胞を単離した。子宮内膜上皮および間質細胞をゲル内で混合培養し、エストロゲンおよびプロゲステロン添加による応答能を免疫染色により確認した。作製した子宮内膜モデルとヒトTS細胞(ナイーブ型ESより作製した胚盤胞様構造(ブラストイド)を三次元で共培養し、子宮内膜の肥厚やTS細胞の浸潤・分化能の変化を経時的に観察した。2)妊娠中期の栄養膜細胞を用いたTS細胞の樹立:妊娠満期の栄養膜細胞からTS細胞を樹立するため、妊娠初期の栄養膜細胞において10倍以上高い発現を示す転写因子(HANDI, SALL4, ZFP42)をレンチウイルスベクターを用い、TS細胞に誘導した。さまざまな転写因子の組み合わせ、妊娠満期の栄養膜細胞からTS細胞を誘導するためには、SALL4が必要であることを突き止めた。しかし、染色体異常について検討したところ、11番染色体長腕部分に高頻度にインプリント遺伝子領域のLOHを認めた。この領域の遺伝子発現はKIP2により制御されているためSh KIP2も遺伝子導入した。この疾患TS細胞がLOHを回避し、疾患特異的なエピゲノムの特徴を保持しているかどうか検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度の研究内容をさらに進め、以下の3項目についての研究を計画している。 (1)胎盤形成とシグナルネットワークの同定:胎盤形成現象を再現可能な至適培養条件下に、TS細胞・子宮内膜の網羅的な遺伝子発現解析(RNA-seq)を行い、vivoの細胞と類似性について比較する。発現データを基にパスウェイ解析にて、リガンド-受容体相互作用と胎盤形成・分化に重要なシグナル経路を予測する。(2)HDP胎盤由来TS細胞株の樹立と微量サンプルに適応した多階層オミックス解析:分娩後のHDP由来の胎盤より、疾患TS細胞株を樹立する(典型例10例以上)。CT細胞と疾患TS細胞の遺伝子発現、DNAメチル化、ヒストン修飾について解析する。メチロームは、PBAT法による全ゲノムバイサルファイトシーケンシング(WGBS)解析をヒストン修飾解析(4種類以上の抗体)は、CUT&TAG-seq法を用いる。さらに、エンハンサー・プロモーターの相互作用に起因する転写制御は、Hi-C法またはHi-ChIP法を用いた立体高次構造解析を行い、立体的相互作用とエピゲノム修飾異常との関連性について解析する。(3)HDP胎盤由来TS細胞と子宮内膜細胞との相互作用:HDPの胎盤形成不全は、胎盤細胞の分化障害が指摘されている。疾患TS細胞と子宮内膜細胞を共培養し、胎盤と母体間のバリアの障害(合胞体細胞:ST分化障害)や子宮内らせん動脈リモデリング不全(絨毛外細胞:EVT分化障害)のメカニズムについて検討する。
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[Journal Article] ASCL2 reciprocally controls key trophoblast lineage decisions during hemochorial placenta development2021
Author(s)
Varberg KM, Iqbal K, Muto M, Simon ME, Scott RL, Kozai K, Choudhury RH, Aplin JD, Biswell R, Gibson M, Okae H, Arima T, Vivian JL, Grundberg E, Soares MJ.
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A.
Volume: 9
Pages: e2016517118.
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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