2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of lung disorders by organic chemicals and development of screening system
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21H04855
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
森本 泰夫 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (30258628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 慎一 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (10520702)
東 秀憲 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (40294889)
和泉 弘人 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 准教授 (50289576)
河井 一明 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (60161262)
竹下 潤一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (60574390)
櫻井 和朗 北九州市立大学, 環境技術研究所, 教授 (70343431)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 架橋型ポリアクリル酸系高分子化合物 / 肺障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本試験において、物理化学的特性の異なるポリアクリル酸系高分子化合物を製造し、動物ばく露モデルや培養細胞にて肺障害やその機序を検討し、mRNA、エクソソーム内包情報伝達物質(microRNA)などの網羅的解析を介して肺障害に関与する責任遺伝子を見出すことを目的とする。そして、今回の試験で得られたデータと既知の化学物質の動物試験等からの知見やデータの再解析等を行い、機械学習などの手法を用いて肺傷害の各種病態の責任遺伝子等を同定し、総合的な病態・機序解析を行い、肺障害のスクリーニングシステムの開発をめざす。 今年度は、物理化学的特性が測定された架橋度の異なる3種類(架橋度0 %、0.1 %、5 %)のポリアクリル酸系高分子化合物をラットに気管内注入試験(2用量+陰性対照)を実施し、注入後、3日、1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後に解剖を実施している。現在、経過を観察中であるが、架橋度の違いにより、気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞や細胞傷害因子の解析、肺の病理所見から、肺炎症の変移が異なることが観察された。また、ポリアクリル酸系高分子化合物とポリエチレングリコール(対照群)を投与したラットの血液を使ってメタボローム解析を行った。 気管内注入試験で使用したポリアクリル酸系高分子化合物の1種類を各種培養細胞株に添加して細胞毒性を検討した。その結果、マウス由来のマクロファージでは高い毒性を示したが、マウス由来の肺胞上皮細胞では毒性を示さなかった。ポリアクリル酸系高分子化合物の取り込みが細胞毒性に関与するか検討するためにFITCを付加したポリアクリル酸系高分子化合物を合成した。また、細胞毒性の機序を明らかにするためポリアクリル酸系高分子化合物を投与した細胞からRNAを抽出して遺伝子の網羅的発現解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物を使った解析の進捗状況:今年度は予定通りに物理化学的特性が測定された架橋度の異なる3種類のポリアクリル酸系高分子化合物(2用量+陰性対照)をラットの気管内に注入し、定期的に解剖を実施して、病理組織標本の作製と各種試料の保存を行った。これらの一部はすでに解析を終了しており、ポリアクリル酸系高分子化合物の架橋度と肺の炎症に関連があることを見出している。また、ポリアクリル酸系高分子化合物をラットの気管内に注入し、血液を試料としたメタボローム解析は終了した。 培養細胞株を用いた解析の進捗状況:マウス由来のマクロファージと肺胞上皮細胞にポリアクリル酸系高分子化合物を投与した細胞毒性試験は終了した。細胞によってポリアクリル酸系高分子化合物の毒性が異なることを見出した。細胞毒性の相違を明らかにするため、ポリアクリル酸系高分子化合物の投与により発現が増減する遺伝子の網羅的解析は終了した。また、細胞によるポリアクリル酸系高分子化合物の取り込みを解析するためにFITCを付加したポリアクリル酸系高分子化合物の作製は終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
動物を使った解析の推進:来年度は、今年度に保存した試料の解析を進めながら新たに物理化学的特性が異なる2種類以上のポリアクリル酸系高分子化合物(2用量+陰性対照)をラットの気管に注入して今年度と同様の試料作製と解析を進める。また、血液や気管支肺胞洗浄液を使ってサイトカイン等の測定やエクソソーム内容情報伝達物質(microRNA)の解析を進める。 培養細胞株を用いた解析の推進:ポリアクリル酸系高分子化合物の細胞毒性に関わる遺伝子を同定する。また、ポリアクリル酸系高分子化合物を細胞が取り込む機序を明らかにする解析を進める。これらの解析からポリアクリル酸系高分子化合物による細胞毒性の機序を明らかにする。 解析結果の融合と機械学習:今回得られた動物および細胞を使った解析データに加え、これまで当教室で蓄積してきた解析データを融合する。これらの解析データから、ポリアクリル酸系高分子化合物が肺傷害を誘導する機序を明らかにする。また、解析データを機械学習することでポリアクリル酸系高分子化合物の物理化学特性の違いにより有害性が予測できるか検討する。最終的に肺有害性を予測するスクリーニング系の構築を目指す。
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