2022 Fiscal Year Research-status Report
1920~40年代日本の技術論:グローバルな知性史の観点から
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21K00090
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
乙部 延剛 大阪大学, 大学院法学研究科, 教授 (50713476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千野 貴裕 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (00732637)
川村 覚文 関東学院大学, 人間共生学部, 准教授 (30713169)
新倉 貴仁 成城大学, 文芸学部, 准教授 (50757721)
馬路 智仁 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80779257)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 技術論 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に立てた指針に基づき、各自が研究を遂行した。すなわち、最終年度での各自の研究成果の報告ならびにその後の活字化を中心的な目標に据え、年度内に2回研究会を開催し、そこで各自の進捗および研究内容を報告した。加えて、全体の進行等に関する打ち合わせはメールやオンライン会議で随時開催し、相互理解と調整を図っている。 また、外部協力者との意見交換、共同研究の推進を目指し、12月に研究協力者の金杭教授(延世大学)を招き、研究会を開催した。研究会では金氏が近代朝鮮半島および大韓民国における技術観について報告し、30-40年代の日本の技術論の影響や、それとの相違点などについて討議、検討した。 あわせて、各自が技術思想に関連する領域での研究を進め、成果を発表・報告した。そのうち代表的なものとして、人種概念の浸透を扱ったTomohito Baji, “An Apex of the Racialization of the World”、日本のマルクス主義とも呼応するグラムシの国家論を論じたTakahiro Chino, "The Modern State and Future Society: Gramsci's Two Conceptions of the "Ethical State'、事務機械の技術について論じた新倉貴仁 「事務機械の歴史社会学的研究に向けて」や、小林秀雄の「もの」観における創発性を論じたNobutaka Otobe ““The way to things”: contentions over materiality and politics in the non-west between Kobayashi Hideo and Maruyama Masao”などがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上でも記したように、本研究では、各自が順調に研究を進め、すでに業績を報告、活字化している。また、申請時より掲げていた、国際学会や国際雑誌での業績発表という点でも目標を達成している。 より重要な点として、本研究課題における中心的研究について、各自が着実に研究を進めており、最終年度での報告、および、課題終了後の活字化に向けて準備が順調に進められている。来年度は最終年度となるが、すでにEuropean Association for Japanese Studiesの研究大会(8月、ベルギー)に、本科研のメンバーを中心としてパネルを応募し、採択が決定している。ここで本科研の研究成果の一部について報告する予定である。 また、本年度は、新型コロナウィルスの流行という予期せぬ事情のために初年度に果たせなかった、韓国の研究協力者の来日、対面での研究会の開催についても実施することができた。日本国内の研究、日本研究の双方を離れた視座からの研究を取り込むことにより、本研究にとって重要な知見が得られた。 他方、新型コロナウィルスの流行は終了してはおらず、その波及効果ともいえる航空運賃等の上昇もあり、依然として、国際学会での報告等に関して、容易ならざる状況が続いている。オンラインの活用等を通じて、研究を円滑に進めていく工夫を講じていく所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度では、国際学会等でこれまで進めてきた研究を発表していく計画である。その主要な機会として、上でも触れたように、2023年8月にベルギーで開催されるEAJSの研究大会において、本科研のメンバー3人が報告を行う。また、これまでの研究から浮かび上がってきた戦後日本思想との関連の解明、英語圏での日本研究の文脈との接続という二つの課題に取り組むために、小山仁美氏(ライデン大学)に協力を仰ぐ計画でいる。小山氏にはすでに、研究会に参加していただいているだけではなく、8月のEAJSの研究大会でもパネルに報告者として加わっていただくことになっている。 あわせて、研究成果の今後の活字化の方策を探るため、研究雑誌や出版社とコンタクトを取り、準備を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
初年度、新型コロナ感染症の流行に伴い、海外の研究協力者の来日がかなわず、その分に充てていた費用が残ることになった。2022年度は当該研究者の来日が可能となったが、航空券費が高騰しており、初年度の残額の一部を用いた。航空費の高騰は続いているため、今年度の残額についてもそれらに充当していく予定である。
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