2021 Fiscal Year Research-status Report
戦中期日本における音楽分野での対外文化資料に関する研究ー国際文化振興会を中心にー
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21K00110
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大久保 真利子 九州大学, 総合研究博物館, 専門研究員 (10811052)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際文化振興会 / SPレコード / 『日本音楽集』 / 町田佳聲 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際文化振興会(1934-1972)が対外文化活動のために制作したSPレコード60枚組のオリジナル資料『日本音楽集』を研究対象として、振興会が描いたイメージ戦略や制作の意図を明らかにすることを目的とする。研究初年度である令和3年度は以下の研究を行った。 (1)振興会が『日本音楽集』に込めたイメージ戦略の基盤について探るため、世界11カ所に派遣された連絡員に注目した。連絡員は、派遣国およびその周辺地域における日本文化の理解度や受容状況を報告書などで提出しており、振興会の機関誌『国際文化』や国際交流基金ライブラリー、アジア歴史資料センターなどに現存する資料にて内容を調査した。その結果、振興会は国や社会的成層によって日本音楽に対する興味や理解が異なることを、連絡員からの報告によって把握していたことが明らかとなった。 (2)手書き未発表の日本語解説書(200字詰め原稿用紙約600枚)について、約半分までのデジタル化および分析を行なった。日本語解説書によってこれまで明らかでなかった助演者や演奏者選定の理由などの一部を補完できる一方で、録音年や録音地など制作に関わる事項はほとんど記載されていないことが明らかとなった。 (3)『日本音楽集』をはじめとしたSPレコードを研究資料として扱う際、同時代の市販レコードの動向を考慮することの重要性を感じたことから、レコードアーカイブ化の現状や音源資料の利活用の在り方を考える研究にも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVIT-19の影響により資料館などでの調査回数を最小限にとどめたため、入手が叶わなかった資料があるものの、デジタル資料を最大限に活用することで、研究はおおむね順調に進んでいる。またレコードのアーカイブ化という新たな視点での研究にも取り組むことができており、研究初年度として一定の成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は関係者の言説などを読み解くことにより、『日本音楽集』の選曲や演奏者選定の実際に迫りたい。また引き続き日本語解説書の調査・分析についても進め、今年度中に全ての作業を終える予定である。
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Causes of Carryover |
感染症対策として調査回数を最小限に抑えたことや、参加学会が軒並みオンライン実施であったことから、調査旅費の支出が少なかったことが主な要因である。未調査機関での調査について適宜進めながら、研究計画の遂行に支障が生じないようにしたい。
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Research Products
(5 results)