2021 Fiscal Year Research-status Report
モダンから俯瞰する─パックス・アメリカーナ期の身体の政治学研究
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21K00382
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Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
中村 嘉雄 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (40346739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小笠原 亜衣 関西学院大学, 法学部, 教授 (60440202)
塚田 幸光 関西学院大学, 法学部, 教授 (40513908)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 身体 / 工業デザイン / 写真論 / 抽象表現主義芸術 / ニューヨーク近代美術館 / 映画 / パックス・アメリカーナ期 / 高度消費経済文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果として、研究代表者の中村は、パックス・アメリカーナ期の政治的身体の理論的枠組みの検証が順調に進んだ。1930年代流線型文化のマシーン的理想身体が、1950年代アメリカの高度消費経済社会文化へとさらに浸透した経緯、および、その手段、メディア分析の手がかりとして、戦後日本で開催された国立近代美術館の「現代写真展」(1953年)に注目した。日本の近代美術館建設の目的は従来の高級芸術を人々の生活に浸透させ、日常に芸術を取り入れることにあった。そして、戦後日本で初となる、ニューヨーク近代美術館と東京国立近代美術館協働の展覧会が現代写真展であった事実は、当時写真が芸術の大衆化を担う中心的なメディアであったことを強力に示唆する。そして、ニューヨーク近代美術館こそ工業デザインなどの大衆文化を芸術に引き上げ、芸術の大衆化を促進する中心的機関であった。そして、この展覧会のアメリカの代表が、当時ニューヨーク近代美術館写真部長であったエドワード・スタイケンであり、本研究で分析を進めるハリー・キャラハンの才能をいち早く見出し、1962年1月にキャラハン、ロバート・フランクの二人の同時写真展を企画したのも彼であった。当時スタイケンがどのような基準でアメリカ側の写真を選定したのか、その詳細を研究すべく東京近代美術館に問い合わせたが、あいにく当時の資料は当時のパンフレットのみ残されていることが判明した。同美術館からもアドバイスを得ながら、現在、スタイケンの写真論からキャラハンとその写真を選定した経緯を分析中である。 各研究分担者も順調に研究を進め50年代のメディア分析へむけた予備的考察で成果を上げている。小笠原は、20世紀初頭の芸術批評家、写真評論家のサダキチ・ハートマンを分析しアメリカ芸術史を保管し、塚田は20世紀初頭の身体、30年代のスペイン市民戦争とアメリカと関係を再考した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度もアメリカへの渡航が制限され研究代表者、研究分担者ともに第1次資料の調査の範囲が狭められたが、日本に存在する資料やアメリカのデジタル化された資料を参照しながら各自研究計画を遂行している。とくに、東京国立近代美術館の写真展を起点とした研究から、写真論(近代的環境の中で抽象化される身体)と芸術の大衆化との関係を実証する方向性を確認できたことが大きい成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得た成果は、研究代表者および研究分担者の実証研究をさらに進展させる可能性を多分に含んでおり、研究の検証範囲を広げ、その精度を増すために、今まで以上に、各研究者間の連絡を密にしながら研究を進める。また、渡航の状況次第によるが、アメリカでの第一次資料の分析と検証も進めていく。
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Causes of Carryover |
研究代表者、研究分担者のアメリカへの渡航制限のために生じた金額である。次年度以降、アメリカへの第1次資料分析・検証のための旅費として利用する予定である。
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Research Products
(4 results)