2023 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of the Genealogy of African American Speculative Fiction in Relation to Scientific Discourses
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21K00384
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
堀 智弘 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (10634719)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 思弁的フィクション / アフリカ系アメリカ人文学 / 奴隷制 |
Outline of Annual Research Achievements |
長らく実施できていなかった米国での調査を9月に実施した。シカゴではシカゴ大学に赴き、日本の大学図書館等ではアクセスできない電子ジャーナルなどを閲覧し、研究課題に関連する文献を収集した。シンシナティではNational Underground Railroad Freedom Centerを訪問し、奴隷解放以前に奴隷の北部への逃亡を助けていた「地下鉄道」や、その地理上の拠点となっていたシンシナティなどのオハイオ川沿いの町に関連する展示を視察し、特に反奴隷制文化の地理的展開を検証するための情報を収集した。ワシントンDCではNational Museum of African American History & Cultureを訪問し、アフリカ系アメリカ人の歴史や文化について近年の研究成果が反映された展示を視察した。ワシントンDCではNational Portrait Galleryも訪問し、開催中の “One Life: Frederick Douglass”という特別展にて、十九世紀の代表的なアフリカ系アメリカ人知識人であったFrederick Douglassに関連する貴重な資料を閲覧した。 十九世紀アメリカ文学におけるアフリカ系アメリカ人の表象という点で特に重要な作品であるMark TwainのAdventures of Huckleberry Finn (1885)を現代の情報カスケード理論の点から 読解し、人種をめぐる思弁的フィクション的な要素の分析を行い、その成果を学会で発表した。この分析を通して、十九世紀後半のアメリカ文学に対する科学的言説的な思考による方向づけをより正確に把握することができた。 2019年から行なっているFrederick Douglassの第二自伝My Bondage and My Freedom (1855)の第一部の翻訳を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画に盛り込まれていた米国での調査を実施できたため、関連する文献収集の点では進捗があった。しかし申請段階での計画では複数回にわたる調査を、予定の最終年度までで1回しか実施できていないため、十分に調査を進めることが困難であった。そのような事情もあり、アフリカ系アメリカ人作 家による思弁的フィクションの系譜の再構築という点では、特に世紀転換期のW.E.B. Du Bois、ハーレムルネッサンス期George S. SchuylerとRudolph Fisherについては、予定していたほど研究を進めることができなかった。同時に、本研究課題の方向性について調整を行い、十九世紀のFrederick Douglass、同時期のアフリカ系アメリカ人表象の点で重要なMark Twain、そして十九世紀の奴隷制度廃止前後の時代を扱ったToni MorrisonのBelovedについては研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
複数回の米国の調査のために計上していた予算が残っているため、研究期間の延長を行った。新たな最終年度となる2024年度は、アフリカ系アメリカ人作家による思弁的フィクションの系譜のなかにToni Morrisonを位置付ける作業を行い、その研究成果を発表する予定である。 Frederick DouglassのMy Bondage and My Freedomの第二部の翻訳に着手する。この翻訳作業を通して、 Douglassの著作における思弁的フィクションの要素の分析を行う。
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Causes of Carryover |
当初研究課題の期間全体で複数回の米国での調査を予定していたが、1回しか実施できていないため次年度使用額が生じた。 次年度に国際学会での発表を行うための旅費等として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)