2021 Fiscal Year Research-status Report
世紀転換期から第2次世界大戦後までのドイツ語圏における群集思考の歴史的展開
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21K00439
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
海老根 剛 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (00419673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古矢 晋一 立教大学, 文学部, 准教授 (20782171)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 群集 / ヴァイマル共和国 / ホロコースト文学 / ドイツ青年運動 / ナチズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は本研究課題の初年度として、研究代表者、研究分担者それぞれが計画に基づいて研究を進めるとともに、研究協力者2名の参加を得て、本研究の主題に関する研究会を実施した。 海老根は、1920年代中葉の新即物主義的な都市文学における大都市ベルリン、群集、および女性の表象の結びつきについて考察を進めた。Rudolf Braun や Martin Kessel の小説において、主人公が大都市ベルリンの街を行き交う無名の群集を構成する存在として提示される仕方、また女性登場人物が都市環境において男性の眼差しによって対象化される様態を検討した。またヴァルター・ベンヤミンの晩年のボードレール論における群集をめぐる議論に関する研究発表を日本フランス語フランス文学会(東北支部)で行った。 古矢はアーレントの『全体主義の起源』第三部「全体主義」における「群集・大衆」の問題について、予備的な研究調査を行った。『全体主義の起源』における「群集・大衆」をめぐる議論を整理し、アーレントの思想におけ る「群集・大衆」の意味と位置づけの検討などに取り組んだ。またレベッカ・ソルニットが提起した「災害ユートピア」における群集の表象というテーマで発表を行った。この発表ではドイツ語圏の文学と思想(クライスト、ゲーテ、カネッティなど)を例に、群集をめぐる言説史から「災害ユートピア」の可能性と限界について検討した。 二度の研究会では、研究協力者である慶応大学の粂田文氏と金沢大学の早川文人氏にご参加いただき、両大戦間期から第二次世界大戦後のドイツ語圏における群集をめぐる代表的な言説を取り上げ、議論を行った。第1回の研究会では、エルンスト・ユンガーの「総動員」について海老根が報告を行い、第2回の研究会では古矢がアーレントの『全体主義の起源』における群集・大衆をめぐる議論を概括する報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度も新型コロナウィルスによる海外渡航の制限が続き、当初計画で予定したドイツでの資料調査および研究者との面談を実施することはできなかったが、それ以外の研究活動については、概ね計画通りに実施することができた。研究代表者の海老根は、ヴァイマル共和国中期の都市小説における群集表象の展開に関する検討を進め、ヘルミニア・ツゥア・ミューレンやイルムガルト・コインらの女性作家による小説作品における群集という主題の現れの分析にも着手している。古矢はアーレントの『全体主義の起源』における「群集・大衆」の問題について考察を進め、『全体主義の起源』における群集・大衆の概念は、ル・ボンやオルテガの古典的な著作や第一次世界大戦をめぐる群集の言説を踏まえながらも、全体的支配を特徴づける強制収容所における被収容者の群集(心理)という問題にも繋がっていること、また『全体主義の起源』以降のアーレントの著作との関係において検討する必要があることを確認した。 加えて2名の研究協力者の参加を得て行った研究会では、それぞれの専門的関心の立場から群集という主題への視座が示され、今後の共同研究のための基礎となる問題関心の共有を計ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、研究代表者、研究協力者のそれぞれが、計画に沿って各自の研究課題に取り組むとともに、研究協力者とともに研究会を開催し議論を深めていく予定である。 海老根は引き続きヴァイマル共和国中期の都市小説、とりわけ女性作家によって書かれた作品における群集表象とそれに関わる主題の検討を行う。また当時のルポルタージュ文学における群集の主題の現れについての調査を行う予定である。年度末にむけて、当該の主題について論文を執筆することを計画している。 古矢も引き続きアーレントの『全体主義の起源』の読解に取り組み、特にアーレントが強制収容所の分析に際して参照したオイゲン・コーゴンやH. G. アードラーなどの生還者たちの著作を集中的に検討する。さらに「災害ユートピア」と群集というテーマで昨年度に発表した口頭発表の内容を論文としてまとめる。 また研究協力者との研究会を複数回実施し、共同の問題関心を具体化するとともに、三年目に計画されているシンポジウムのテーマを設定し、適宜、他分野の研究者への登壇依頼を検討する予定である。 さらに2022年度には、研究代表者、研究協力者ともに、これまで新型コロナウィルスにともなう渡航規制のために延期されていたドイツでの資料調査および研究者との面談を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、当初計画において研究代表者および研究協力者が予定していた国外での資料調査および研究者との面談が、新型コロナウィルスの蔓延による海外渡航制限のために実施できず、結果的に多額の次年度使用額が生じてしまった。また研究協力者への謝金についても、今年度は1回がオンライン開催となり、もう1回についても研究協力者から旅費支給の辞退願があったため、当初予定していた謝金の支払いは発生しなかった。来年度は、研究代表者・研究協力者ともに海外渡航による資料調査と研究者との面談を予定しており、また研究協力者への謝金の支払いも行う予定である。そのため来年度以降は、計画通りに予算執行を行える見込みである。
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Research Products
(6 results)