2021 Fiscal Year Research-status Report
Ein Studium ueber die Ueberlieferung und Entwicklung des Begriffs "Bildungsromans" in der ersten Haelfte des 19. Jahrhunderts.
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21K00440
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
北原 寛子 北海学園大学, 経済学部, 教授 (60382016)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Bildungsroman / 教養小説 / 18世紀ドイツ / 19世紀ドイツ / 小説理論 / テクスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀前半においてBildungsroman概念がどのように継承され発展したのかを明らかにしようとしている。18世紀の哲学や教育学で頻繁に論じられていた人間のBildung(「(精神的な)成長」「人格形成」など)がどのように文学に取り込まれ、小説理論で使用される用語となり、やがてBildungsromanという概念が生み出されたのかを検討するために、詩人の伝記に注目している。その理由は、19世紀初頭にBildungsromanという語を最初に用いたと現在確認されているモルゲンシュテルンが、ヤコービの作品について論じるなかでこの語を使用したからである。そこで本研究では、18世紀後半に活躍し、19世紀前半に伝記が出版されていた重要な詩人の伝記を集め、そのなかで伝記が書かれた時期によりBildungsroman(およびその類語)が使われているか、あるいはどのような表現上の特徴が伝記の執筆時期ごとにみられるのかについて分析を試みる予定であった。昨年度はまずヴィーラントとレッシングに的を絞り、彼らの伝記を収集して分析に着手した。古書や図書館からの貸借で入手できる資料の収集を進めたが、しかしコロナ禍に起因すると思われる流通の停滞も影響して、数か月たった現在でも届いていない資料がある。とくに19世紀初頭の資料は、古書として流通するには古く、また雑誌記事などの体裁をとるものも割合として多い時代であるため、ドイツ語圏の図書館・文書館に赴くことも大切であったが、コロナ禍のためそれは見送らなければならなかった。研究資料へのアクセスが困難となり、研究をどのように進展させるべきか、どの方向性をとるべきなのかなどについての問題も解決しなければならない状況にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により渡航が制限されているために、あるいは国際的な輸送が滞りがちなために、資料の入手で手間取っている。申し込みから数か月たった昨今でも、いまだに手元に届いていない資料もあり、当初の計画が実行できていない。伝記テクストの執筆年代ごとの表現の比較から、どのようにBildung概念が詩人の伝記に使用することが一般化したのかを明らかにする予定だったが、複数の資料がそろわないため、別の方向から問題を検討しなおす必要に迫られている。こうした状況から、昨年度は本研究の成果を公表するに至らなかった。しかし手元に収集した資料の分析は進めており、方向性の修正や、別の小テーマについて先に取り組むなどして、全体の計画を進展させることは可能である。昨年度の研究成果という観点からはやや遅れているといわざるを得ないが、今後に生かすべく研究を進め、2022年度以降の成果につなげられるよう取り組みを続ける。
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Strategy for Future Research Activity |
19世紀前半に執筆された詩人の伝記からBildungsroman(およびその類語)の発展を分析する予定から本研究をスタートさせる予定であった。しかしコロナ禍での渡航制限や流通の停滞などのために資料収集で困難に直面した。そこで2022年度は、伝記分析研究については今後の状況改善を待ちながら、結果の公表を急ぐことなく資料の分析をすすめる。 その一方で2022年度は、伝記分析の次に取り組む予定であったシラーとフリードリヒ・シュレーゲルの文学理論とそこに示されたBildung観が、20世紀のBildungsroman観に大きく影響していることをテクスト分析から明らかにする課題に取り組む。シラーは、小説は半ば文学ではあるが、完全に芸術として認定することはできないという立場をとっていた。その一方で、演劇が観客に教育的効果を与えることを論文で主張したり、古代ギリシャの文学作品を論じるにあたって、その作品を生み出した詩人たちのBildung[人格形成]の問題をおもに扱うなど、文学とBildungが密接にかかわることをさまざまな機会に訴えた。シュレーゲルは小説をもっともすぐれた文学ジャンルであるとする点でシラーとは全く異なる立場をとったが、一方でシラーとほぼ同じ1790年代後半に、ギリシャ古典文学を取り上げたテクストにおいて、文学作品を論じることはその作者のBildungを考察することと同等だという立場で議論している。彼らの格調高いテクストは、小説への立場の違いにも関わらず、20世紀のBildungsromanの理論化にあたって影響を与えていることがテクスト分析から明らかにできると予想される。この仮説の妥当性は、さまざまなテクストを比較することによって示されうるであろう。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による渡航制限などにより、研究を十全に遂行する状況になかったため、次年度使用額が生じた。今後も研究を着実に進めるため、資料の取集、分析、発表にあたって必要な費用に充てる予定である。
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