2023 Fiscal Year Annual Research Report
Basic research on "Seki-Hitsu-Monjo" (documents written in pencil) in the early modern period of Japan
Project/Area Number |
21K00872
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩崎 義則 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (60294849)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 石筆文書 / 松浦熈 / 松浦清 / 赤石筆 / 赤石脂 / 吉村家文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度(2023年度)は,(1)長崎歴史文化博物館・松浦史料博物館・平戸市・佐世保市・等において,石筆と石筆文書についての補足的な調査。(2)長崎歴史文化博物館所蔵の平戸城下町人吉村家文書(未整理文書)の調査と研究。(3)松浦熈の随筆『亀岡随筆』に所収された石筆記事の分析を実施した。 (1)では,谷村家文書(平戸市蔵複写本),西口松浦家文書(佐世保市蔵複写本)の中に,熈が発給した石筆文書計4通を新たに見出した。(2)の吉村家文書には,熈による石筆文書30点余がある。最終年度において,未整理状態であった吉村家文書全体の調査と撮影を終了した。その調査データをもとに,石筆文書の機能について研究成果を報告した(松浦熈編著『亀岡随筆』から復元する「安楽世界」-隠居大名の思想と実践-第4回近世随筆研究会,2023年1月28日,於慶応大学)。(3)の研究成果の一部は,「エッセイ大名・松浦静山と『甲子夜話』の世界」(Kotoba,55,集英社,2024年春号)として公開した。 研究期間全体を通じた成果として,松浦史料博物館・吉村家文書等から計45点余の石筆文書を発見・調査した。あわせて,近世日本の石筆(赤石筆)に関する記録類を網羅的に収集・検討。また,松浦清が創設した平戸藩楽歳堂文庫の収集鉱物(赤石筆の原料となった赤石脂)の調査も行った。これらの分析により,平戸藩においては他藩に類例をみない石筆と石筆文書をめぐる特異な環境が存在したことを究明した。その成果は,「近世日本の石筆と平戸藩」(中野等編『中近世九州・西国史研究』所収,吉川弘文館,2024年3月)において公開した。これらの研究によって,石筆と和紙を用いて作成された石筆文書は,近世日本固有の文書であること。さらに,石筆文書は,現在,日本国内においては,熈が作成したものしか伝存していない可能性が高いことを確認した。
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