2023 Fiscal Year Research-status Report
植民地朝鮮のアナーキズムのグローバルな視点からの再構築
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21K00892
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小野 容照 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (00705436)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アナーキズム / ナショナリズム / 朝鮮 / 独立運動 / 植民地 / 朝鮮近代史 / 歴史叙述 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は従来、主に韓国で一国史的に、そして独立運動への貢献を強調するかたちで分析されてきた朝鮮アナーキズム史をグローバルな文脈に位置付ける。そして、独立運動の一環としてではなく、「いま・ここで」支配のない状態を作り出すために国境を越えて協力しあう運動として再構築することを目指す。具体的には、①西欧で生まれたアナーキズムが朝鮮半島にどのように流入したか、②朝鮮人と他民族のアナーキストの国境を越えた交流、③朝鮮アナーキズムと独立運動の対立や葛藤、以上の3点を解明することで、朝鮮アナーキズム史をグローバルな視点で再構築するものである。 3年目である2023年は韓国と日本に所蔵されている朝鮮独立運動関連の雑誌や、日本のアナーキストの雑誌を分析することで①を進めた。朝鮮におけるアナーキズムの受容に深く影響を及ぼしていた日本のアナーキズムの翻訳状況の調査を進め、とくに大杉栄の影響が極めて大きく、大杉はクロポトキンやシュティルナーといった西欧アナーキストの紹介のみならず、大杉自身が構築した「生の拡充」思想も朝鮮の知識人が興味を持ち、朝鮮語訳していたことをまず解明した。大杉がたんなる西欧アナーキズムの紹介者ではなく、思想家として朝鮮に与えていた結果、共産党に所属してコミンテルンの資金で活動する朝鮮人共産主義者までも大杉への関心から、日本語からの重訳によってクロポトキンなどの著作を朝鮮に紹介していたことも判明した。こうして従来未解明であった、朝鮮ではアナーキストのみならず共産主義者もアナーキズムを紹介していたという現象を、アナボル未分化という通説を超えて、思想家大杉栄に対する共鳴という観点から説明することができた。この成果を「植民地朝鮮におけるアナーキズム伝播」という論文にまとめて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はこれまでの研究成果として、論文「植民地朝鮮におけるアナーキズム伝播:朝鮮共産主義運動と大杉栄」を発表するとともに、その過程で、新たな分析の観点も見つけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの分析の成果を今後も論文等のかたちで発表しつつ、それと並行して国内外調査を踏まえた研究を進展する。
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Causes of Carryover |
韓国での史料調査ができなかったため旅費の執行ができなかった。今後は資料調査をさらに行うため、旅費にも使用する予定である。
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