2021 Fiscal Year Research-status Report
The Study of the International Aid and the Military independence of South Asia in the Cold War
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21K00894
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
渡辺 昭一 東北学院大学, 文学部, 教授 (70182920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 勝彦 明治大学, 商学部, 専任教授 (10201849)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国際援助 / 軍事的自立化 / 南アジア冷戦 / 技術移転 / 経済開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、印パ紛争や中印国境紛争の緊迫化によって南アジアにおいても1960年代に「遅れた冷戦」が成立したという最近の研究を踏まえて、研究史上看過されてきた開発援助と軍事の関係に着目し、共産主義諸国に対抗して欧米諸国が南アジア地域秩序の再編に向け展開した国際的援助競争とそれに基づく南アジアの経済的軍事的自立化の構築過程を検討することにある。 初年度は、南アジア諸国の開発・軍事戦略によって作り出される新国際秩序変容過程の背景に注目して、最近公開された一次史料を収集しつつ研究動向を再確認することに努めた。その際、①1960年代南アジアの「遅れた冷戦」構造の研究が依然として非常に限られていること、②国際援助が本格化する1960年代の英米の連携、国際機関である世界銀行による具体的援助過程の研究が十分でないこと、③構造体制下での英米の軍事援助過程の分析が非常に限られていること、さらには、④軍事援助と武器移転の関係についてはほとんど研究がないことを確認し、収集した資料の活用方法を探った。 経済援助については、インド援助コンソーシアムと第3次インド五カ年計画との関係を追求しつつ、軍事援助については、中印紛争勃発までの印パ間で係争中のカシミール紛争解決の交渉について検討した。 また、国際武器移転研究では、冷戦期に米ソ両国が展開した戦略的武器移転が大規模な軍事援助と経済援助を背景としていたという事実を確認し、米ソとインドの国際援助関係に注目して検討を加えつつある。具体的には、インドの防衛体制の自立化を支えたバンガロールのヒンダスタン航空機会社とボンベイ(現ムンバイ)のマザゴン造船所の創設拡充、ならびに軍産学連携の基盤を形成したインド工科大学5校の設立、これらに対する米ソの関わり方に注目し、援助供与国(米ソ)と援助受益国(インド)の双方の思惑がどのように絡み合っていたのかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分担研究者とともに連携しながらおおむね順調に進展している。 初年度の計画で、資料収集と研究動向の分析に重点をおいたことから、すでにこれまで収集した資料を確認しながら、新たに不足分を収集することに努めた。研究計画の目的を一定程度達することができた。 ただコロナ感染対策の影響で国内外からの資料収集および対面での研究会には制約があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度において、収集した資料を手掛かりに1960年代初頭の南アジアに対する英米両国の連携状況を確認するために、1961年度から1964年度にかけてのインド援助コンソーシアムをめぐる欧米諸国の国際援助の実態過程を究明していく。 また、中印紛争勃発によってインドが軍事援助を要請したことによって英米を中心とした軍事援助の内容とその進捗過程を検討しながら、冷戦下での非同盟政策の意義と欧米の軍事援助の限界を究明していく。このインドの軍事的・経済的自立化を検討するに際しては、防衛体制の自立化、兵器国産化、高技能人材の育成など、さまざまな視点からの実証分析が必要であるため、これらの点についても視野に入れながら総合的に検討する予定でいる。 軍事援助と技術移転の関連については、これまではインド・シンガポールの研究者の先行研究に注目して、「防衛体制の自立化」と「軍事的自立化」という概念に則して、その具体的な達成度を1960-70年代のインドを対象に考察してきたことを踏まえて、今後は、そうした研究の延長線上で、冷戦下の60年代中葉に始まった米印間の「頭脳流出」(brain drain)の構造を追究していく。具体的には、ネルー・ケネディ会談、アメリカによるインド工科大学カンプール校の設立支援、アメリカの海外援助法と国際開発庁の創設、工学開発協会の基礎工学改革、アメリカ移民政策の転換、そしてインドの第3次5カ年計画などに注目し、米印双方の一次資料を駆使して、冷戦期に始まった米印間の「頭脳流出」の歴史的構造を解明していく予定でいる。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大予防により、海外への資料収集調査が困難であったことから、当該研究に必要なデジタルデータベースの購入を検討したが、本研究交付金額では賄いきれなかったために他の研究分担金を合算して利用した結果、残額が生じた。 今年度もコロナ感染拡大予防状況によって海外への渡航が困難な可能性も高いために、引き続き昨年度同様の方法でデジタルデータベースの購入を検討している。
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