2021 Fiscal Year Research-status Report
元素・DNA分析による土坑用途の研究-考古学・人類学・民俗学と自然科学の融合-
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21K00989
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
渡邉 正巳 島根大学, エスチュアリー研究センター, 客員研究員 (80626276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊木 俊朗 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (20282543)
澤藤 りかい 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 日本学術振興会特別研究員(CPD) (50814612)
瀬戸 浩二 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (60252897)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 土坑墓 / 墓坑 / 遺骸痕跡 / 窒素、炭素分析 / リン分析 / DNA分析 / 粒度分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
【Current Status】 当初計画に基づき大島2遺跡(北海道北見市常呂町)で3つの土坑墓(可能性)と、常楽寺柿木田1号墳(島根県出雲市)で2つの墓坑(確定)を対象とした試料採取を行った。このほか博労町遺跡(鳥取県米子市)で2つの土坑墓(可能性)、中西遺跡(奈良県御所市)において2つの土坑墓(確定)を対象とした試料採取を行い、合計9つの土坑を対象とした試料採取ができた。この数は、本研究を始めた2007年以降2020年までに分析を行った土坑の総数とほぼ同じ数である。これらの分析を通して、土坑内での各元素の動態が明らかになる可能性がある。 また、中西遺跡で3つの土器棺から試料採取を行ったほか、京都府埋蔵文化財センター、出雲国府跡(島根県松江市)でも用途不明の壺(胞衣壺、地鎮具と推定)を対象とした試料採取を行った。土器棺は従来1つの分析例があるのみである。土坑に比べ閉鎖環境が高く、遺骸の痕跡(分解された元素)が残る可能性も高いことから、理論の裏付けに役立つと考えられる。用途不明の壺についてDNA分析結果により内容物が明らかになれば、化学分析の結果から内容物(用途)推定の足がかりとなる可能性も示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【Current Status】 当初計画に基づき、大島2遺跡(北海道北見市常呂町)と常楽寺柿木田1号墳(島根県出雲市)において試料採取を行った。大島2遺跡では土坑墓の可能性がある3つの土坑(Pit1~3)を検出し、88samples を採取した。常楽寺柿木田1号墳(島根県出雲市)の墓坑ST001,ST002より 17samples を採取した。このほか、共同研究者(澤藤りかい)のネットワークにより、京都府埋蔵文化財センターにおいて胞衣壺の可能性がある壺、内容物のある須恵器、中西遺跡発掘現場(奈良県立橿原考古学研究所:奈良県御所市)において土坑墓及び土器棺と考えられる壺を対象とした試料採取を行った。このほか、山地古墳(島根県出雲市)で枕石、博労町遺跡(鳥取県米子市)で土坑墓、出雲国府跡(島根県松江市)で地鎮具と考えられる壺を対象とした試料採取を行った。 土坑(墓)について、当初計画した大島2遺跡、常楽寺柿木田1号のほか、博労町遺跡、中西遺跡でも試料採取を実施し、分析例を増やせた。また、従来分析例がほぼなかった胞衣壺や土器棺にまで分析対象を広げられた。 採取試料の内、100試料についてリン(P)分析、93試料について炭素窒素(CN)分析、73試料について粒度分析を終えた。一方、共同研究者の澤藤が22年度からデンマーク(コペンハーゲン大学)へ留学し、DNA分析の自動化に取り組んでいる。このこととコロナ禍の影響もあり、DNA分析の実施が遅れていた。
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Strategy for Future Research Activity |
採取済の試料について分析、データ整理を進める。特に、コペンハーゲン大学でのDNA分析の自動化に目処が付いたことから、遅れているDNA分析の進展が望める。リン分析について、外部委託を行っているが、前年度は外部委託先の実績がなく、委託までに時間を要した。このため、年度後半で一括して委託(実施)することになった。本年度は委託先の実績ができたことから、複数回に分けて委託(実施)し、データ整理を円滑に行えるようにする。更にDNA分析の進捗状況を踏まえ、関係学会(日本文化財科学会、日本人類学会など)での発表を行う。 当初計画した数量の分析試料は、昨年度でほぼ採取済みである。しかし、「棺」・「土坑墓」(あるいは類似する遺構・遺物)と確定している遺構は多くなく、分析を行っても良好な結果が得られない可能性が指摘される。学会活動等を通して本研究の意義を伝え、新たな地点(遺跡・遺構)で、より良好な分析試料の採取を進めていく。
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