2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K01233
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
清水 円香 立命館大学, 法学部, 教授 (50452800)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 会社法 / 企業グループ / 親子会社 / 結合企業 / EU会社法 / フランス会社法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グループ構成会社とその利害関係者の利益保護の要請と、グループ全体の利益を考慮してなされるグループ構成会社の合理的な運営の確保の要請をいかに調整すべきかについて、EU法の議論と、それを受けたフランスおよびドイツの議論を解明することをその目的の一つとする。 2022年度は、2021年度に行った研究も踏まえ、ヨーロッパ模範会社法(European Model Companies Act; 以下、「EMCA」という)第15章における結合企業規定を調査・分析し、その成果を論文において公表した。EMCAの結合企業規定の大きな特徴として、企業グループの機能向上・促進を主目的とし、親会社の指図権を認める規律および「グループ利益」を承認する規律を擁することが挙げられる。EMCAは他方で、子会社とその利害関係者の保護も無視されるべきでないとして、子会社利害関係者保護を目的とする規律も有する。つまり、EMCAは、企業グループ経営の容易化の要請と子会社・子会社利害関係者保護の要請の調整をその基本的な考え方とするものと理解される。前記論文では、EMCAの結合企業規定の全体像を紹介するとともに、「グループ利益」承認の背景を探求し、EMCAの子会社利害関係者保護に係る制度を整理した。そこでは、「グループ利益」承認の背景の基礎は、ドイツのコンツェルン法のモデルがEUで支持を得られず、他の選択肢を採る必要に迫られたこと、および、各加盟国の近時のアプローチの趨勢を考慮したことにあると考えられることを明らかにした。また、EMCAの子会社利害関係者保護に係る制度について、親会社の指図の公示の意義、グループ利益承認の限界、親会社の指図権の限界、親会社の主導による子会社少数株主のセルアウト権に係るオプトアウトの取扱い、および、子会社債権者保護の在り方を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、①ヨーロッパ模範会社法成立に至るまでのヨーロッパにおける議論の経緯をさらに整理し、成果をまとめること、②活発な議論のみられるドイツ法の状況についてさらなる調査を行うこと、③ヨーロッパ法・ドイツ法の議論を踏まえたフランス法における最新の議論も調査することを予定していた。概ね予定通りに進めることができた。①については、【研究実績の概要】で述べたとおりである。②については、L. Wernert, Das Gruppeninteresse: Eine Untersuchung zum deutschen, auslandischen, europaischen und internationalen Recht, Berlin 2020、および、P. Hommelhoff, Die Unternehmensgruppe im Europaischen Binnenmarkt, in: M. Habersack u.a. (Hrsg.), Festschrift fur Eberhard Stilz, Munchen 2014といった文献を基に調査を進めた。③については、主に、フランスのシンクタンクであるLe club des juristesのVers une reconnaissance de l’interet de groupe dans l’union europeenne? (2015)といった文書を基に調査をした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、「グループ利益」の承認に係るEUおよびその加盟国(特にフランスおよびドイツ)の最新の議論を明らかにすることのほか、EUおよびその加盟国における子会社利害関係者保護法制を整理・分析することも課題としており、2023年度は、後者の調査・分析にも注力する。具体的には、フランスにおいて、主に子会社債権者救済の観点から親会社の責任を肯定する際の構成として、複数のグループ構成会社の財産の統合を擬制するという、わが国の法人格否認の法理に類似した議論があり、2023年度はこのような議論の調査も進めることを予定している。
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