2021 Fiscal Year Research-status Report
Political Analysis of Immigration Federalism and Sanctuary Cities in the United States
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21K01293
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
安岡 正晴 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (00335407)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 連邦制 / 聖域都市 / 移民政策 / アメリカ政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、米国における聖域都市の政治的背景とその実態について各種報道資料や公開されている行政・司法資料、政治学、社会学、地理学の先行研究などを通じて調査を行った。今年度はトランプ政権下で聖域都市と連邦政府の間で展開した連邦訴訟の展開とその帰結に対する時系列的な分析を行った。また以前にサンフランシスコ市政府(2017年3月)、ニューヨーク市政府(2018年3月)、シアトル市政府(2019年3月)、ボストン市政府(2020年3月)で行ったインタビュー調査の結果をその後の訴訟展開なども踏まえた上で分析し、聖域都市下の移民行政の実態について比較研究を行った。特に聖域都市として2017年以来調査を続けてきたサンフランシスコ市とニューヨーク市は、聖域都市への補助金を停止することを命じたトランプ政権の大統領令を巡る訴訟で、バイデン政権に変わったことにより連邦司法省が訴えを取り下げたため、2021年3月に最終的に勝訴したため、今年度中に決着がついた事例として分析することができた。本年度の研究成果の一部は、Masaharu YASUOKA. 2022. “Do sanctuary cities protect unauthorised immigrants?: Intergovernmental disputes between the Trump administration and sanctuary cities over immigration policies,“ In Kazunari SAKAI and Noemi LANNA, eds., Migration Governance in Asia: A Multi-Level Analysis. (Abingdon, Oxon, UK: Routledge)として公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、新型コロナウィルスの流行による渡航制限により、予定していた聖域都市の訪問調査を行うことができなかったが、以前に行った現地調査で収集した資料やインタビューデータの解析を、その後の訴訟展開なども踏まえながら解析したことにより、初年度として予定していた研究成果は概ね上げることができたが、海外調査用に予定していた研究費は次年度へ持ち越すこととなった。令和4年度はトランプ政権からバイデン政権へと政権交代したことや、コロナ禍を経験したことで聖域都市や聖域州の移民行政がどのように変化したか実態調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究申請時と現在で大きく変化した点は、1)不法移民のみならず合法移民の受け入れについても消極的なトランプ共和党政権から、比較的移民に寛容な政策を掲げるバイデン民主党政権へと政権交代したこと、2)コロナウィルスの大流行を踏まえて、地方自治体の公衆衛生行政の重要性が増したこと、そのことが不法移民政策への影響も不可避であること、である。今後の研究は以上の変化も踏まえながら、1)連邦政府が共和党政権から民主党政権へと交代したことによる、移民行政を巡る連邦ー州ー地方政府間関係の変化、2)コロナ禍を経験したことによる聖域都市の不法移民に対する施策や対応の変化に特に注目しながら、1)米国における移民行政を巡る連邦ー州ー地方政府関係の変化 2)聖域都市政策の持続可能性(政権交代やコロナ禍などの変化にも関わらず、聖域都市政策の伝統をどこまでいじできるのか)を明らかにしていきたい。そのため、1)行政当局者への面接調査 2)現地図書館による市政・州政関係資料の収集 3)移民政策・移民行政をめぐる先行研究の調査を引き続き行ってゆきたい。
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Causes of Carryover |
令和3年度に米国における現地調査を予定していたため、海外旅費を計上していたが、コロナウィルス流行による渡航制限のため、海外調査を実施できなかった。本年度は令和3年度から持ち越した助成金を海外調査旅費と文献資料(アメリカ都市・州政治、移民行政関連図書)の購入に当てる予定である。
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