2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K01336
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
縣 公一郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00159328)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 行政改革 / ディジタル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である2021年度は、引続き感染症が収束せず、海外出張は叶わなかった。よって、計画していたIIAS(国際行政学会)年次研究大会では、ZoomによるJapan Panel: A New Frontier of DX in Government - Development and Perspectives of Agency for Digital Transformation in Japanを7月27日16:00-17:30(JST)にて設定し、他の日本人研究者二名と共に個別報告者として出席して、"Expectations for My Number System in Japan - Partial Integration of Information System in Public Services"と題し報告した。マイナンバー機能の拡充が政府の予定よりも約半年遅延したことを受け、1. Expectations for E-Government,、2. Consideration in Three Aspects、 3. My Number System in Japan、4. Perspectives and Possibilities以上の4部を以て構成し、E-Tax、マイナンバー健康保険制度、及びマイナンバー災害情報システムを実例として、セキュリティー、効率性、及びアクセシビリティーの三観点から、マイナンバーカード制度への今後の期待と限界に関して議論した。このセッションでは、ドイツ人研究者一名を討論者として招聘し、質疑応答に当たったが、本報告に関して、詳細な最新情報提供と現状分析内容の点で高い評価を得た。本成果は、日本における行政改革の一側面としてのディジタル化に関して、従来の展開を総括すると共に今後の展望を検討する意味で、非常に重要であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに国際会議に直接出席して報告することは叶わなかったが、過去二年間で驚異的に普及したリモート会議手法を用いて行政改革に関する国際会議に参画し、上記の報告を実施した。他の報告者二名の報告内容、及びドイツ人討論者との議論をも通じて、ディジタル化による行政改革の一般論と日本での具象論を充実させた。同様の観点をドイツに応用して、ディジタル化による行政改革の日独比較を展開する基盤を一定程度確立した。加えて、20年度に纏めた「感染症対応の日独概括比較 - 協調性/自律性、そして一元性/多元性の観点から」の時系列を更に伸長させ、「感染症対応の日独概括比較・考」を記した。これら両稿を通じて、感染症対応の一般類型、日独個々における感染症対応の時系列展開、対応策の一元性と多様性、対応における政府間関係の自律性と協調性、これらを分析視角として提示した上で、日独両国における概括的な対等比較を行った。その結果、ドイツにおける中央・地方政府の制度的協調行動に基づいた一元的対応の先行、及びその後の各州政府による自律的な個別対応の多様性が観察された一方で、日本においては、基本的に中央政府と地方政府による制度的な協調性は見られず、それぞれが自律的に決定しながら、必要な一元的対応と個別多様な対応が組合されている点が、観察された。この研究成果は、日独両国での政府対応一般が、連邦制に基づく協調的意思決定の制度化、そして単一国家における中央と地方の役割分担に基づく自律的対応、かかる二つの対照的なスタンスを基盤に展開されている、という政府活動の一般化に繋がり得る。この認識は、今後更に両国の行政改革を観察・分析する上で重要な視角となると同時に、感染症に関する具象論が、他の政策分野への認識枠組を更に提供することとなろう。
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Strategy for Future Research Activity |
22年度は、情報通信分野、とりわけ行政改革としてのE-Government政策に焦点を当てたい。日本では、2000年にIT基本法が制定されて以来、e-Japan構想が展開されてきた。同年以降の時系列的な事実関係を十分に確認した上で、如何なる政策内容が決定され、如何なるエポックが形成されてきたのか、決定された政策内容がどのように実装されてきたのか、実装の背景にある諸要因とは何か、少なくともこれら三観点に関して、政府関連文書と二次文献の収集・処理を手法としながら、考察を展開したい。一定の考察が纏まった時点にて、複数の政府関係者及び研究者との意見交換に臨みたい。 他方、全くの偶然ではあるが、ドイツ連邦政府におけるE-Government政策も2000年を出発点としている。よって、日独比較として、少なくとも上記三観点を共通の視座として設定し、ドイツに関しても、政府関係文書と二次文献の収集・処理を通じて考察を展開したい。そして、感染症等の社会情勢が許容する限り、連邦政府関係者とドイツ人研究者との直接意見交換を実現したい。それが難しい場合には、可能な限りリモート会見を設定して情報収集に努めたい。 なお、E-Governmentの一般理論として、考察のキーポイントとなるのは、E-Government関連情報の標準化、ディジタル化、及び共有化、これらの三側面であると思われる。政府情報がE-Governmentとして処理される以前に、まず情報形式の標準化、少なくとも公文書管理体制の確立が必要である。その上で、関連情報の遡及的・将来的ディジタル化が第二の条件となる。そして、標準化とディジタル化が進展した関連情報が、政府機関相互で共有化されて初めて、意思決定の質的向上は図られる。こうした理論的基盤に立脚しつつ、、行政改革としてのE-Government政策の日独比較を進展させたいと考えている。
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Causes of Carryover |
感染症の国際状況に大きな改善が見られず、内外出張が叶わなかったため、旅費の支出はなかった。他方、国際会議自身はZoomを以て実施し、上記の通り報告そのものは実現した。22年度は、可能な限り国際会議に実地参画し、海外研究者との意見交換を実現すると同時に、国内においても意見交換の機会を拡大したい。加えて引続き、必要な内外関連文献の収集・整理、及び必要なOA資材の購入は、予定通り実施したい。
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Research Products
(2 results)