2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K01336
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
縣 公一郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00159328)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 行政改革 / NPM / ポストNPM |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、研究実績として、少なくとも3点の成果を報告したい。まず、研究目的の一つとしてのエイジェンシー化に関し、22年7月に、縣公一郎/原田久/横田信孝編『検証 独立行政法人 「もう一つの官僚制」を解剖する』(①)を公刊し、「序論 独立行政法人の検証―一元化からの出発」を執筆した。ここでは、2001年に制度化された際、任務内容、制度背景、事業規模等の観点で、多様性が非常に高い法人群に、一元的な制度運用を適用したことの影響を考察し、15年の制度改正によって、或る程度の多元的運営が可能となった点を指摘した。 更に、22年10月には、Ch.ポリット/G.ブカールト著、縣公一郎/稲継裕昭監訳『行政改革の国際比較 NPMを超えて』を出版した。本著は、1980年代以降世界的潮流となったNPM(ニュー・パブリック・マネジメント)が各国行政改革に与えた影響を考察し、その成果と問題点を国際比較を通じて明らかにしている。その結果、NPMが更に推進されるべき分野が明確なると共に、NPMに代替・補完する方向性として、NWS(ネオ・ウェーバー型国家)、及びNPG(ニュー・パブリック・ガバナンス)が提唱され、各国における今後の行政改革の方向性が検討されている。 加えて、K.Agata/H.Inatsugu/H.Shiroyama ed. Public Administration in Japanの編纂に着手し、2022年度内に、22章構成の原稿が取り纏められた。自らは、その第16章"Digital Transformation (DX) in Japanese Government"を執筆した。ディジタル化、標準化、共有化、セキュリティーの四観点から、中央政府のDXを考察し、今後のDXの発展に関する考察を深める上での基盤的議論を展開した。本書は、英国の出版社から、2024年3月刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感染症の到来により、予定していた訪独に基づく現地調査が全く実現していない。他方、公開資料、及び文献調査による研究は、一定の進捗を示している。上記の通り、まず、NPMに基づくエイジェンシー化の一形態として、日本における独立行政法人制度の研究に関し、編著として、上記①を刊行した。本書全体は、2001年以来制度化22年を迎えた同制度が、2015年の制度改正を経験しつつ、本省から特出された一定の行政任務を各法人が如何に実現してきたのか、この点に関して様々な側面から考察したものであり、自らの論文は、制度変更の意義に関する議論を展開した。 更に、上記②の英文原著は、NPMの世界的意義と、それを補完・代替するNWS、及びNPGの果たすべき役割に関して、先進諸国間の比較行政学的視座から考察を展開したものである。新自由主義を基盤としたNPMは、必ずしも全ての政府活動において適合したモデルとは見なされず、従来型の国家モデルの修正としてのNWS、そして政府、市場、及びシヴィック3部門の協力を前提としたNPGによって補完・代替される必要性が大きい、と議論されている。その日本語訳を上梓叶ったことは、本研究の成果として重要であると共に、日本の行政学発展の上で、一定の意義を有している。 加えて、上記③は、予定通り公刊されれば、日本の行政に関して英語によって情報発信される包括的書籍として、1983年以来の刊行と為り、一定の評価を得られよう。自らの論文は、国際比較において有意義と見なし得る四つの観点として、ディジタル化、標準化、共有化、セキュリティーを提示し、それに依拠しつつ、2000年代から展開されてきた日本の中央政府におけるDXの現状を分析・評価したものである。中央政府におけるDXに関し、マクロ政策とミクロ政策を弁別しつつ、最新状況まで通時的に考察したものとして、行政学上一定の意義を有するものとなろう。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度中に、是非訪独を実現し、現地での資料収集・意見交換を実装したい。本年度は、NPM改革では為し遂げられなかった改革側面を採り上げ、ポストNPM行政改革の経緯を検討し、改革進捗への考察を加え、今後の展望を得たい。そのために、マクロ改革視点の事例として給水政策を採り上げたい。日本では、2018年に水道法改正が為され、今後地方政府政策として、NPM改革の意義と限界が給水政策の実態として詳らかとなるため、考察対象として的確である。加えてドイツでも、給水体制の変革がベルリンやハンブルクといった大都市で検討され、再公営化を通じたNPMからの転換が図られている。更にミクロ改革視点の事例として、エイジェンシー化に基づく業績評価の具体的事例を採り上げたい。日本では、本年度までの研究の通り、独立行政法人への評価手法に改革が為され、第三者による二次評価を強調する制度から、委託主体である中央府省自身による一次評価を重視する制度へと変化した。またドイツでは、行政機関の業績比較という制度が基本法第91d条新設によって導入され、新たな業績評価制度が確立されつつある。 これらの観点に関する考察に向けて、日本に関しては、水道法改正に基づいた水道事業におけるコンセッション方式の展開と、現時点でのモニタリング状況について具体事例を以て注目すると同時に、改正された独立行政法人評価制度そのものに対する評価に関して、具体事例に基づいた現状分析と考察を展開したい。ドイツについては、実装された水道事業におけるNPMからの回帰の展開と、その現状に関する評価と同時に、新たな行政評価方法の具体的展開とそのモニタリングに関して情報収集し、訪独が実現した場合の現地での資料収集・意見交換に備えたい。現地調査としては、可能であれば、ベルリン州政府、及び連邦内務省を訪問し、担当者へのインタヴューと意見交換を実現したいと考えている。
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Causes of Carryover |
感染症の到来により、企図していた訪独出張・研究調査が実施叶わなかったため、計上している旅費関連経費が未支出である。可能であれば、23年度の訪独出張を実現したい。
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Research Products
(4 results)