2022 Fiscal Year Research-status Report
A study of the influence of biological evolution on the dawn of neoclassical economics in Britain and the United States in the 1890s and 1930s
Project/Area Number |
21K01409
|
Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
江頭 進 小樽商科大学, 商学部, 副学長 (80292077)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | A;fred Lotka / Paul Samuelson / 経済生物学 / ロツカ-ヴォルテッラモデル / 力学系 / 進化経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、Alfred LotkaとPaul Samuelsonの直接的関係に焦点を当てて研究を行った。その結果、SamuelsonからLotkaへの個人的な問い合わせと、一方的な引用は確定できたがLotka自身の経済学への関心は、確認できなかった。Lotka自身には熱力学的手法への生態系の議論の統合への意図は明確に存在したが、Samuelson自身がどれだけ進化論を意識していたかは明らかではない。現時点では、Samuelson自身は均衡へと向かう圧力における、人々の合理性の根拠として淘汰圧を利用していただけであると考えられる。 ただし、シュンペータやマーシャルが想定したような経済のダイナミクスではなく、経済的な定常状態を描くときにはこのサミュエルソンの方法は妥当であっても、均衡近傍以外での人々の経済活動を説得力をもって説明できるかどうかは別問題である。1市場モデルでの動態分析は、ロツカ-ヴォルテッラモデルで表現できたとしても、一般均衡理論体系上は、最終的には単純な力学モデルに帰結してしまうことは、シュンペータやマーシャルの視点が現代経済学の発達の中で脱落してしまったことを意味する。この点で進化論の新古典派的解消は、19世紀の方法論争の中で議論されてきた力学か生物学かという議論の止揚ではなく、議論の範囲を限定し、当時進められていた数理生物学の手法を導入することで、生物学的アプローチを力学系で置き換えたということができる。したがって、経済学への進化論の本格的な導入には、1990年代の「ルーチン」という複製子概念の登場まで待たなければならないというのが、2022年度までの暫定的な結論である。 当該研究は、2022年8月のオンラインの研究会で報告された。現在は、「アルフレッド・ロトカとサミュエルソンによる経済進化論の解消」(仮)と題した論文を執筆中であり、2023年には学会誌に投稿予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で海外文献資料の調査が思うようにできず、計画通りの研究遂行が危ぶまれたが、プリンストン研究所のLotka Paper(オンライン)を用いて研究を進めた結果、LotkaとSamuelsonの個人的な関係は具体的に理解できるようになった。LotkaやSamuelsonの関連文献の読み込みもほぼ終了し、文献調査は完了したと見なすことができる。 現在は「アルフレッド・ロトカとサミュエルソンによる経済進化論の解消」(仮)と題した論文を執筆中であり、2023年には学会誌に投稿予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該研究は、現在最終的な論文の執筆過程にあり、2023年度中に投稿予定である。この研究で、18世紀末から20世紀前半までの進化経済学の歴史はほぼ網羅できたことになる。今後は、20世紀後半から現代に至るまでのつながりと、現代の進化経済学の状況を説明することになる。研究代表者はすでにこの分野で何本かの刊行論文があるが、今後は領域できに関連の強い進化経営学と進化経済学の検証を中心におこなう予定である。
|
Causes of Carryover |
2022年度は、予定していたアメリカプリンストン研究所の現地での文献調査が、新型コロナ感染拡大による渡航制限を受け実施できなかったことにより、海外旅費が余ったことが原因である。ただ、プリンストン毛休所のLotka Paperは半分以上がデジタル資料化されており、結果として文献調査には大きな支障は出なかった。ただし、まだ見落としている文献がある可能性があり、新型コロナが5類に変更されたことを受け、2023年度に海外調査を実施したいと考えている。
|
Research Products
(1 results)