2021 Fiscal Year Research-status Report
Effect of regional economic integration on within-country inequality in developing countries: empirical analysis using satellite imagery
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21K01460
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
岡部 美砂 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (20434649)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ASEAN経済共同体 / 途上国の空間的所得格差 / 人工衛星画像 / 夜間光量 / 土地被覆画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、貿易自由化による貿易の利益が途上国内の地域間に波及するかどうか、また地域間格差に与える影響について人工衛星画像を用いた詳細な地域レベルデータによって明らかにすることを目的としている。特に、複数の人工衛星画像と既存の地理データを組み合わせて用いることでより正確な地域レベルの経済活動水準の計測を行い、途上国内の空間的な経済発展プロセスを分析し、途上国における地域・空間的な再分配政策を導出しようとする試みである。 初年度である2021年度は途上国を中心とした地域経済統合を対象として、貿易データを中心とする経済統計および地理データと、人工衛星画像を組み合わせることで分析のためのデータベースの整備を進めた。人工衛星画像として夜間光量画像をこれまで用いられたDMSPより精度の高いVIIRSによるものを用いてデータ収集と整備を行った。また、それらの夜間光量画像を中心とする人工衛星画像データとLandsatの土地被覆画像、LandScanの人口分布データを組み合わせて用いるためのデータ収集と整備を進めた。 特に2021年度はASEANを中心としたデータを整備し、地域経済統合の進展と国内所得格差、国内経済活動の格差を計測するための準備作業を行った。同時に、これらの地域の国際産業連関表と貿易データを用いてグローバルバリューチェーン(GVCs)への参加度を産業別に推計し、次年度から順次行う計画である貿易自由化やGVCsへの参加が国内地域間格差に与える影響の分析に用いるためのデータ集積を行った。次年度以降、分析結果を論文として公表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はデータベース整備を行う計画であった。本研究課題はASEANを中心として、途上国における地域経済統合や貿易自由化が空間的所得格差に与える影響を分析する。用いるデータは、人工衛星画像を中心に詳細な地域レベルの経済活動をとらえるデータと、地域特性でウェイト付けをした貿易自由化水準および地域経済統合水準のデータである。前者については、夜間光量データと土地被覆画像、および人口分布データを組み合わせて用いるため、データ間の調整を行いながら分析に必要なデータを蓄積した。データ量が非常に多いため、まずはASEANの数カ国を対象にデータ収集・調整を進めている。複数のデータを組み合わせて用いていることから誤差などが生じる可能性もあるため、国勢調査の入手可能なものを用いて比較することでデータの正確性の確認も同時に進めている。 次年度以降の分析の説明変数として用いる財別貿易データと国際産業連関表などを用いた貿易自由化水準、経済統合水準のデータも同時に収集・蓄積を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きデータ収集と確認作業を行う予定である。2022年度はこれら蓄積したデータから各国の詳細な地域レベルの所得水準の推計値を導出して分析を開始する。2022年度は夜間光量データと人口分布データの組み合わせを用いて詳細地域レベルの経済活動水準とし、貿易自由化水準および地域経済統合の水準が与える影響の地域差について分析を行う。その後、2023年にかけて都市部の人口過密地域の経済厚生水準、および農村地域の所得水準を人工衛星の三次元地形データ、自然環境・農作地データと人口分布データ等を組み合わせる方法を用いて推計を補完する予定である。 説明変数として用いる貿易自由化水準および経済統合の水準などの政策変数は、各地域・地点のインフラ、地理特性、気候データ等によってウェイト付けを行い、経済成長要因のコントロール変数として用いる。これらの分析は、地域別所得水準、および農村部の所得水準、都市部内の厚生水準にそれぞれ区分して行い、最終的には貿易の利益の波及効果が地域間および地域内でどのように生じるのかを検証する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度のデータ収集・データベースの構築の途中経過では、現地調査などでデータの補完や構築したデータの正確性を検証する予定であった。2021年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響で海外渡航が困難であったため、現地調査は実施しなかったため次年度使用額が生じた。次年度以降、渡航が可能になり次第、現地調査を実施する計画である。
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