2022 Fiscal Year Research-status Report
Long - Term Interest Rate under the Monetary Policy of Negative Interest Rate : Analyses of Market Structure and Function
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21K01569
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
伊藤 隆康 明治大学, 商学部, 専任教授 (60361888)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マイナス金利政策 / CDS / YCC / 国債 / 市場との対話 / 日銀 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は次に述べる2つの視点から研究を遂行した。(1) マイナス金利政策下での CDS (Credit Default Swap)と国債市場との関係を分析した。日銀がマイナス金利政策を採用した期間において、CDS と JGB 市場は連動せず、互い影響を与えなかった。一方、YCC (Yield Curve Control)導入後のマイナス金利政策の下で、CDS と JGB 市場は連動していた。CDS と JGB の市場は、YCC の導入前は分断していたため、CDS が国債市場に対する保険として機能するかどうかは確認できなかった。一方、YCC 導入後のマイナス金利政策の下ではCDSと国債市場は統合されていた。しかし、CDSから国債市場への因果関係は認められたが、その逆は確認できなかったため、CDS市場は国債市場に対する保険として機能していなかった。YCCの導入により、国債市場が市場・価格発見機能を取り戻したため、CDSと国債の市場が統合され始めたと考えられる。 (2) 2022年12月の長期金利の上限拡大につき、まず、報道と日銀の市場との対話を通して本件の決定プロセスを検証した。続いて、1月の決定会合の結果発表前日である17日までのデータを用いて、長期金利とイールドカーブの反応を分析した。10年物新発国債利回りは12月20日から強含み、2023年1月5日に新たな上限である0.5%まで上昇し、17日までその水準を維持した。この間、13日の取引時間中に10年物新発国債利回りは、0.545%まで上昇する場面があった。これは2015年6月以来、7年7カ月ぶりの水準である。10年物国債利回りから8年物国債利回りを引いた値は12月19日には-0.053%であったが、1月17日には-0.165%まで拡大し、イールドカーブのくぼみが修正されることはなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 今年度は2つの研究視点から研究を遂行し、2点とも論文として学術誌に刊行できたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
国債と金利スワップ市場間の連動性やトランスミッション効果、裁定関係を分析して、金利スワップ市場と日本国債市場が分断していたのか否かを検証する。
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Causes of Carryover |
アジアで開催予定の国際コンファレンスがオンライン開催となったためである。来年度は国際コンファレンスに参加し、助成金を利用する予定である。
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