2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K01607
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
北浦 貴士 明治学院大学, 経済学部, 教授 (00633489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 昌良 東京都立大学, 経営学研究科, 教授 (70237832)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 役員派遣 / 減価償却 / 資金調達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に実施した研究成果は、以下の通りである。 企業勃興期の株式会社の資金調達方法は、株式を中心としたものであり、渋沢栄一などの企業家(発起人)が、株式発行に際して、重要な役割を果たしていた。そのような企業家は、設立後に大株主経営者として経営に影響を与えた。そのような代表的な企業家に、渋沢栄一の女婿である大川平三郎がいる。大川は、樺太工業を設立後、1910年代から1920年代まで、積極的な拡大を行った。しかし、1920年代から1930年代初頭の相次ぐ恐慌下で経営難に陥った。1920年代の樺太工業の計家の特徴は、減価償却を削減した高配当の維持と借入金の増大であった。樺太工業に代表される幾つかの企業は、日本興業銀行から借入を行っており、1930年の昭和恐慌で経営が悪化した。日本興業銀行は、これらの経営悪化企業に対して、役員を派遣し、経営再建を図った。役員を派遣された企業では、役員派遣をきっかけに、減価償却の拡充が見られた。以上の研究結果は、日本会計研究学会の査読雑誌である『会計プログレス』に掲載された。 次に、発起人を含む企業家に関する研究が、会計史研究にどのように貢献し得るのか、また、企業家が歴史的に企業の会計処理の決定にどのような役割を果たしたのかという点を考察した。戦前期日本においては、会計に関する強制的な規制は存在せず、企業家による裁量権は大きかった。考察結果は、企業家研究フォーラム20周年シンポジウムで「経営史および会計史における企業家研究の可能性」で報告した。 第三に、企業勃興期も含めた戦前期の日本企業の業績データベースの作成を始めた。これによって、企業勃興期に設立された株式会社がその後、どのような資金調達によって資金を集め、どのような経営状況になっていたのかを今後考察していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究業績という点では、概ね順調に論文執筆が進んでおり、おおむね順調に進展していると言える。しかし、コロナによって、東京都公文書館での史料収集が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、東京都公文書館での史料調査を進めていき、企業勃興期において、企業家が果たした役割に関する研究を分析する。加えて、戦前期の企業家が、配当政策・減価償却に対して、果たした役割を考察していく。
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Causes of Carryover |
コロナによって、研究調査が遅れていることに伴って、研究費の使用が予定より遅れているため、次年度使用額が生じた。今後は、計画的に利用していく予定である。
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