2021 Fiscal Year Research-status Report
純粋持株会社と企業グループ活動に関する理論的・実証的研究
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21K01787
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
頼 誠 兵庫県立大学, 社会科学研究科, 教授 (70191674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 宰ウク 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 講師 (50599264)
塘 誠 成城大学, 経済学部, 教授 (80320042)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 純粋持株会社 / 企業間取引 / 企業集団管理 / 海外現地法人 / 配当金 / ロイヤルティ / サプライチェーン・マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
純粋持株会社制をとる企業の実態を明らかにすることは日本企業の国際競争力の向上に寄与する可能性がある。本研究の目的は,純粋持株会社制(HD制)の有効性を確認し,その成否を分ける要因は何なのか,HD制を継続している企業のねらい,HD制をすでに廃止した企業の廃止理由について明らかにすることで,これからHD制を始めようとする企業に警告を発すると共に,成功へのヒントを与えることにある。たとえば,HD傘下にある企業集団を管理する方法,事業の集中と選択の方法,HDと分社の力関係のバランスをとる方法を明らかにする。本研究では,これらの仕組みを実態調査により解明し,どのような状況下でどのようなHD制にすれば効率的なのか,あるいは別の組織形態の方が効率的なのか,グループ企業の管理に管理会計がどのように貢献しうるかを明らかにするのが当初のねらいであった。 しかしながら,企業訪問,他大学の研究者との交流に支障がでているため,一年目としては,インタビュー調査は始められず,現在のところ,塘教授,金講師を中心に,経済産業省の協力により得たデータにより,企業集団管理の実態を明らかにする準備を進めている。 すなわち,経済産業省の企業活動基本調査ならびに海外事業活動調査の調査結果から東証1部企業のみを抽出し独自集計中である。具体的には、企業グループ活動の重複の可能性に関して、海外事業活動の売上、仕入について、それぞれ日本、現地、第三国との取引関係比率の変化を業種、時系列等の観点からスライスして、作業仮設の設定中である。また、資源の効率的な割り当ての問題に関して、出資者向け支払い、研究開発費、設備投資に着目し、その変化を業種、時系列等の観点からスライスして、作業仮設の設定中である。現在、小サンプルでテスト中であるが、出資比率と配当及び内部留保との関連等で一定の関係がみられそうである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
想定されたこととはいえ,新型コロナによる図書館の利用制限,大学ネットワークの不備,出張不許可,県境をまたぐ移動の禁止など,企業訪問・他大学の研究者との交流に支障がでた。加えて個人的事情(家族の介護等)により論文は出ていないが,文献研究を進め,過去の研究を再検討しつつ,研究方向を軌道修正することを考えている。 他方,共同研究者は,経産省から入手したデータの解析を行うための書類の作成および予備的作業に時間をかけている。それらのデータを利用して何ができるかも検討中であり,今後成果が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の管理会計の研究は単独の企業内の管理という観点から行われてきた。しかし,現実には,企業はグループとして活動しており,複数の企業が協同して活動している。管理会計も組織間管理会計という観点が重要になってくる。企業集団の管理の中心に位置するのは,親会社である持株会社であるが,純粋持株会社の解禁後,純粋持株会社が増加した。我々の研究は,純粋持株会社の増加の理由,その事例研究と課題を,文献研究,企業の公表資料,インタビュー調査により検討することから始まった。だが,インタビュー調査を行うためには企業の協力を必要とし,国内もさることながら海外渡航に制限がある現在は遂行困難な状況にあった。今後,仮説の構築と計画,インタビュー調査の質問項目の検討から実施へと移行したい。 今日のグループ会社の活動は国境を越えて行われるのが通常であることから,コーポレート・ガバナンスに関する規制,あるいはガイドラインが当局によって設けられる動きがある。グローバル企業では,異文化コンフリクトをどのように回避し,海外子会社をコントロールしているのだろうか。責任会計も含め,MCSの構成要素の種類,運用は,日本国内とは違う観点で構築されている。たとえば,人的資源管理と業績評価の運用方法は現地の慣習に則したものにする必要がある。加えて,自然災害や新型コロナの流行,海外進出先での紛争等により,サプライチェーンの分断や現地企業の撤退のようなリスク管理も研究課題となる。 目下の研究課題としては,塘教授・金講師を中心に,経済産業省の協力により得たデータを分析することにより,企業集団管理の実態を明らかにすることにある。もうしばらくはこのデータ取得と処理の準備に時間をかけることになる。
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Causes of Carryover |
新型コロナにより,ヒアリングができず,学会出張,打ち合わせ出張などが許可されなかったため。本年は,出張が承認されれば,旅費として使用したい。また、統計ソフトや、PC関連機器の購入、図書費などにも当てたい。
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