2021 Fiscal Year Research-status Report
IFRS導入によるコンフリクトの発生とその回避・解消のメカニズムの研究
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21K01810
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Research Institution | Kyoto University of Advanced Science |
Principal Investigator |
徳賀 芳弘 京都先端科学大学, 経済経営学部, 教授 (70163970)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | IFRS / 発展途上国 / 訪問面接調査 / 質問票調査 / コンフリクト / 環境要因 / 共進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究の渉猟を包括的・網羅的に行った(下記のa、b、c、dそれぞれ、上位ランキングのジャーナルに掲載された関連論文、及びランク外の開発途上法域を扱う2種類の専門ジャーナル、並びに関連書物を調査)。 a. 先進諸法域におけるIFRS導入の実態や経済的帰結についての調査・研究。b.開発途上法域におけるIFRS導入の実態や経済的帰結についての調査・研究。なお、両法域の政治・経済・法律等の環境要因に関する世界銀行・IMF等の実態調査のレビューは一応終了している。c. 新制度派経済学・社会学による「同型化」や新古典派経済学による「ネットワーク外部性」のような、当該法域のIFRS受容の理由を説明する理論研究。d.「コンフリクト理論(紛争理論)」も本研究で扱うコンフリクトの発生を別の視点から理論化しているので、検討の対象とした。 さらに、M. Granovetterに代表される経済社会学やR. H. Thalerに代表される行動経済学も開発途上国のIFRSに対する行動の原理を考察する上で有効と判断して検討を行った。これらの先行研究からの示唆に基づいて本研究における仮説の構築を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は既にミャンマーで2度の面接調査・質問票調査、カンボジアで1度の面接調査を行い、経験とデータを蓄積している。ミャンマーでは、軍事独裁政権から民主的政権への短い移行期に調査を行うことができたが、その後、再び軍事クーデターが発生し、軍事独裁政権へ戻っている。そのため、カンシリーリスクと新型コロナ感染症により、実地調査はできなかったが、当初の計画通り、1年目は先行研究の渉猟を行ってきた。しかし、もともとミャンマーに関する文献が少ないことから、主に他の開発途上国の研究書と国連の報告書の整理を行った。また、これまでに得た知見について、問題意識を共有できる国内の研究者と意見交換を行った。2年目には、新型コロナ感染症が収束し、訪問国の情勢が安定すれば、すぐに調査を開始できるように準備をしている。関連する国際的な学会が、新型コロナ感染症の影響により、中止・延期となったり、オンラインのみになった為、実態調査のためのネットワーク作りは進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の理論研究と先行研究のレビューから引き出した仮説の検証を、訪問面接調査と質問票調査を利用して行う。両法域において、面接対象に調査を行い、多数・多面的な証言に基づいて、当該両法域の会計実務の実態解明を行う予定である。とりわけ、IFRSは当該法域のどの環境要因との間にコンフリクトを生み出しているか、及びどのような具体的な方法でコンフリクトの回避・解消・緩和が行われたかを明らかにする。それらをエビデンスとして、仮説の検証を進める。調査毎にディスカッションペーパー(以後DP)を作成し、研究会等で意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症により、国際学会及び国内の学会がオンラインに切り替わったため、旅費の使用が計画通りにならなかった。また、打合せ旅費として計上していたものについても、同様にほぼ全てがオンラインで開催されたため、旅費の使用が極端に減ったのが、次年度使用額が生じた理由である。 今年度においては、移動制限等の緩和により、対面での打合せ、研究会、学会が開催される予定である。今年度分の助成金と合わせて旅費に使用するとともに、英語論文をより多く発表する予定である。そのための翻訳料金、印刷代、郵送代、および公開するためのHP改定料金等に使用する予定でる。
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